会社の人事というのは非常に単純で、言うなればジグソーパズルのようなもの。たとえばポジションが二つあって、ピースが二つあるときに、どっちをどっちにはめたら組織にとっての成果が最大化できるかを考えて、それを実行するだけなのです。基本的には、そこに個人の希望が入る余地はありません。
そもそもポジションに空きがなければ希望は通らないし、空きがあったとしても、人事が「この人は別の部署に配置するほうが力を発揮してくれそうだ」と考えれば、そっちに配属される。それだけの話です。だからむしろ、希望が通らないことをそう重く考えることはないのです。
周りの人が「なるほど」と思うのがいい人事
みなさんを落胆させようとして言っているのではありません。いい人事とは、本人にとっては予想外で、周りの人は納得する人事です。むしろ、人事異動において個人の希望が通る会社は危ないとさえ思っています。
もっと言えば、職種別採用だって危ない面があります。まだ仕事をやったことがないのに、自分に合った仕事かどうかがわかるわけないですよね。それなのに学生に選ばせたところで、「ハズレ」である場合がほとんどです。
実際に昔、「学生の売り手市場で、なかなかいい人材が採れない」ときに、ある会社が苦し紛れに「理系の人は全員、研究所に配属します」という策を打ったことがあります。でも理系だからといって、みんなが研究に向いているというわけではありません。配属されてから、成果をあげられるかどうかも未知数です。案の定、その取り組みは失敗して、2、3年でやめたようです。
「正しいと思い込む」のが得策
ただし、強い希望があるなら、一応は主張してみてもいいでしょう。何人かの候補がいたとして、人事としては「誰でもいい」「どこに配置してもいい」というようなシチュエーションも稀にはあるからです。
それでもし希望が通れば「やった!」と喜ぶ。通らなかったとしても、「人事の判断が正しい」と思い込む。そういう姿勢でいるのが良いように思います。そのほうが「望まない人事」に心を煩わすこともなくなるでしょう。
現実問題、人事の判断が正しいかどうかはわかりませんが、少なくとも本人より人事のほうが全体のことをわかって配置しているので、ここは「正しいと思い込む」のが得策なのです。