レシートと同様、銀行振り込みのお客様控えやクレジットカードの支払い明細も証拠の1つとなる。慣習として領収書がもらいづらい結婚式のご祝儀も、案内状に金額をメモしておけば証拠能力が高まる。いずれにしても実態がわかる形で書類を残しておくことが大切だ。

ところで、会社員が特に気をつけたいのは、領収書を利用した経費の水増し請求。白紙の領収書をもらってあとから自分で記入したり、金額を多めに書き換えるなどして改ざんするのは、立派な犯罪行為となる。本人は小遣い稼ぎのつもりでも、刑事罰を科せられる恐れがある。

領収書は、その交付を求められた受領者が作成する義務を負う。そのため弁済者が自分で書いたり勝手に書き換えてしまうと、私文書偽造罪(刑法159条)に問われる。さらに偽造した領収書を経理等に提出すれば、偽造私文書等行使罪(同161条)に、その結果、金銭等を得れば詐欺罪(同246条)になる。

偽造していなくても、私的に使った費用の領収書を流用し、経理に提出して金銭を得れば、詐欺罪が成立する。10年以下の懲役なので、決して軽い刑罰ではない。また刑事告発されなくても、民事上の責任を免れるわけではない。

 「雇用契約上、懲戒処分を受ける可能性は非常に高いし、金額によっては会社から不法行為(民法709条)に基づく損害賠償が請求されることも考えられます。コンプライアンスの徹底で企業は厳しい処分を下す傾向にあります。くれぐれも軽はずみな行動は慎むべきです」(同)

(ライヴ・アート=図版作成)