■検証!そのとき私はどう対処したか
値段の書かれていない葬儀メニューには気をつけろ!
「一番安いコースを選んだつもりですが、結局は300万円もの請求書がまわってきて仰天しましたね。しかも担当者の態度が不誠実だったので、いま思い出しても本当に腹が立ちます」
東京在住の会社員Aさん(41歳)は、憮然とした表情で4年前に経験した父親の葬儀を振り返る。
会社経営者だったAさんの父は、体の不調を訴え入院してからわずか1週間で亡くなった。すると看護師長が現れ「3時間後までに病室を明け渡してほしい。指定業者がいるので、そこに遺体の搬送を頼んではどうか」と告げたのである。
遺族感情を逆なでするような対応ぶりに、Aさんは激怒。「指定業者」という響きにも胡散臭さを感じたので「別の業者を頼みます!」と啖呵をきってしまった。
しかしAさん一家は葬式を出したことがなく、その方面の知識は皆無に近い。迷っていると、Aさんの母が「そういえば知り合いが『安上がりな葬儀社がある』と話していたわ。そこに頼もうかしら」と言い出したのである。
知人を通して連絡を入れると葬儀業者はすぐに現れ、病室から遺体を搬送してくれた。Aさんたちは「いい業者が見つかった」と胸をなでおろしたのだが、それも束の間だった。この葬儀社、「安上がり」でも「いい業者」でもなかったのである。
「見積もり時にメニューを見せられましたが、肝心の値段が書かれていないんですよ。いちいち価格を確認しながら安いコースを設定しました。たとえば霊柩車に最上級のキャディラックを選ぶと30万円かかるというので、15万円の国産車にしました。ところが、今度は現場の担当者がおかしな動きをするわけです」
通夜には150人の想定に対して200人ほどが参列した。参列者の応接はAさんの会社の後輩が取り仕切っていたのだが――。
「担当者が後輩の頭越しに『寿司桶が足りない。あと5つは注文しましょう』と、忙しい僕のところへ何度も言ってくるのです。僕はその都度、『後輩に任せてある。彼に聞いてくれ』と返事をするのですが、担当者はそのうち喪主である兄をつかまえて『頼みます』と言わせてしまった。あとで聞いたら、後輩は『絶対不要になると思ったから、葬儀社には追加注文するなと何度も念押ししたのに……。騙されましたよ』と悔しがるのです。もちろん追加した寿司桶は見事に余ってしまいました」
一事が万事で、通夜・告別式の間中、Aさんは業者の言動にいちいち不愉快な思いをさせられたというのである。