諸問題に具体的な解決策を示す政党を目指す

【塩田】国民民主党は旧民主党、旧民進党にはなかった総務会を党内に新設しました。

【玉木】かつての民主党政権の反省の一つは、決まっても決定に従わない、組織の決定を個人の都合や選挙区事情でひっくり返して反対論を唱える、決まったのにその後に自分の意見をメディアに向けて主張し続ける。ばらばらの印象を与え、国民の信頼を失う大きな原因となった。組織で決まったことを守らない先輩方を、嫌というほど見てきた。

決まるまでは徹底的に議論したらいいけど、いったん決まったら、みんなで従う。その基本的なルールが守れないなら、とても政権なんか担えません。議論はしっかりやる。でも、決まったことには従う。この政党文化を新党に根付かせたい。自民党の仕組みも参考にして総務会を設け、重鎮の平野博文元官房長官に総務会長をお願いしました。

【塩田】自民党は派閥争いのガス抜きの場という効用を認識して総務会を活用している面があり、臭いものにふたをする装置という弊害がしはしば指摘されます。

【玉木】わが党には自民党みたいに党内派閥はありません。総務会は誰でも参加して闊達な議論ができるようにメンバーも決めています。政策の中でもあまり議論が分かれないような法案については政務調査会で決めますが、国論を二分し、党内でも意見が分かれるような案件は総務会で決定する。どういう案件を総務会にかけるかは役員会で決めます。

【塩田】国民民主党結成は支持組織の連合(日本労働組合総連合会)の強い働きかけが大きなエネルギーとなったという見方もあります。

【玉木】連合は大事な支援団体で、特に今回の働き方改革などを議論するときには非常に貴重な情報もいただける大事な組織です。欧米を見ても、主要な労働組合の応援を得ている政党は存在します。働く人の声を受け止める組織という意味で、連携を図り、いい関係を築いていきたい。ですが、未来志向でさまざまな分野の人たちの多様な意見を取り入れていくことが重要で、連合に甘えすぎてはいけない。

【塩田】連合と政策協定を結ぶという動きが出ているようですね。

【玉木】その話をいただいていますが、具体的には秋口くらいになるのかなと思っています。中身は全然、決まっていません。

われわれも党の綱領の中に、働く者の立場を重視すると書いています。連合は重要な支持組織ですから、お互いの意見を出し合い、政策協定を結んで、働く人たちが幸せになるような政策の実現に努めていきたい。

【塩田】国民民主党は「改革中道政党」を掲げていますが、どんな政党を目指しますか。

【玉木】リベラルから穏健保守まで、広く包摂する党で、綱領にそれを書いています。もう一つ、「対決よりも解決」と唱えています。安倍晋三首相はおかしいけど、野党も物足りない、野党がどういう国家像や政策を打ち出すか見えない、と言われます。対決もするけど、内外の諸問題について、具体的な解決策を示す政党を目指したい。

国会の運営でも原則として審議拒否はしない。議論の場で徹底的に論戦する。森友・加計問題は特別委員会を設置して追及し、併せて社会保障や財政再建、北朝鮮問題などを予算委員会や各委員会で論議し、解決策をどんどん提案する。

中道というのは、政策的に真ん中というよりも、異なる意見を丁寧に調整していくことをいとわない政党だと考えています。極めて多様な世の中になっていますから、イデオロギーで決めつけて、いい、悪いというのではなく、多様な国民、多様な世界の中で調整、調和を目指していく。分断を許さない。今、世界や社会がどんどん分断され、人と人の関係がぎすぎすしています。国と国の関係も、分断ではなく、統合を目指したい。大塚さんは「正直な政治」「偏らない政治」「現実的な政治」とよく言っています。それが中道の要素です。中でも「現実的な政治」が大事です。

玉木雄一郎(たまき・ゆういちろう)
国民民主党共同代表・衆議院議員
1969年5月1日、香川県大川郡寒川村(現さぬき市)生まれ。現在49歳。祖父は地元の農協の組合長、父も農協の仕事に従事。農家の長男として育つ。香川県立高松高から東京大学法学部に進む。卒業後、大蔵省(現財務省)に入省。アメリカに留学し、97年にハーバード大学ケネディスクール修了。帰国後、外務省、金融庁、内閣府などに出向。内閣府特命担当相だった石原伸晃、金子一義、村上誠一郎の各大臣の秘書専門官を務める。退官して、2005年の総選挙に香川2区から民主党公認で出馬して落選。09年総選挙で初当選(以後、香川2区で連続当選4回)。民主党副幹事長・政策調査会副会長を経て、16年9月の民進党代表選に出馬(3位敗退)。民進党幹事長代理となる。17年11月の希望の党共同代表選挙に出馬して共同代表となる。辞任を表明した小池百合子代表の後継として希望の党の単独代表に。18年5月、国民民主党の結党に参加し、大塚耕平・元民進党代表とともに共同代表に就任。
(撮影=尾崎三朗)
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