これから求められる、精神力・洞察力

──具体的にはどのような改革を計画されていますか。

今後2年間かけて全国400以上の支店をすべて「次世代店舗」に切り替えていきます。その旗艦店とも呼べるのが商業施設「ギンザシックス」内の銀座店です。従来型の銀行では当たり前だった出入り口付近に並ぶATMや、順番を待つ顧客の待合コーナー、行員が並ぶ長細い窓口をなくし、すっきりした空間に個別の相談ブースを充実させたのです。

今回の大改革は約500億円の投資以上に、AIやRPA技術革新があってこそでした。これまで人海戦術で処理していた大量の事務処理作業を、これら技術の登場で大幅に削減することができたからです。

たとえば従来の銀行窓口の奥には、さらに広い事務スペースが広がっており、1対2の割合で事務行員の作業空間のほうがお客様スペースよりも大きかったほどです。広大なバックヤードでは、銀行業務につきものの膨大な紙の書類を処理する事務職員が大量に働いていました。しかし、紙の書類をデジタル化し、全国数カ所にあるデータセンターで作業を集約し、それらの事務スペースを支店からなくすことが実現できました。

もっとも、だいぶ前から通常業務のペーパーレス化は進んでいましたし、インターネットバンキングなどで口座番号や基本情報などはデジタル処理されていました。しかし、銀行にとって最後のネックは「印鑑」の存在だったんです。みなさんも数枚つづりの書類に何カ所も押印を続けるアナログな作業にうんざりされたことがあると思います。「印鑑をなくそう」という案も出ましたが、日本の文化、慣習として深く根付いており、当行だけで実現できることでもありません。結果的に印鑑をデジタル化する方法を模索し、印鑑専用のパッドに押印すれば、そのままデジタル処理できるようにしました。

今後の銀行支店は、各種手続きにおける「事務の場」ではなく「相談の場」に変化していきます。

──三井住友銀行では17年秋、3年間で4000人分の業務量削減を発表しました。多くの人員が不要になるということでしょうか。

肝心なのは「4000人」削減ではなく「業務量」削減だという点です。よく誤解されますが、単に人件費削減のためのAI導入ではありません。むしろこれまで膨大な事務作業で忙殺されてきた行員の負担を減らすため、そしてより創造的な業務についてもらうための布石なのです。

AIを活用した店舗効率化による業務削減なども含めると、2020年3月までに4000人分の業務を削減する方針。