こうして「文章の外のヒント」を吸収しておけば、おおよそ文章の内容を想像することができます。ある程度本を読んでいれば、「ああ、これと同じような内容を他の文章で読んだことがあるな」「このテーマについて書かれた文章なら前に読んだことがあるぞ!」と、まったく新しい文章であっても、過去に読んだ文章の内容と関連させることができます。

こうして、東大生は多くのヒントがある状態で文章を読み始めます。どういう内容が文章の中に盛り込まれているのかをあらかじめ理解できている状態で文章を読んでいるのですから、素早く、かつ正しく読解できないはずがないのです。

「読み方」や「読解力」以前の問題で、「文章の外からヒントを得る力」が理解度とスピードを左右するのです!

「読解力」と「ヒント探し」の力を試す実験

まだ信じられないという人は、書店に行って、こういう実験をしてみてください。

1:表紙もタイトルも何も見ないで、1冊本を選んでみる
2:その本のページをペラペラめくって、真ん中あたりのページを適当に開く
3:そのページの内容が理解できるかどうかをチェックする
4:3で理解できなかったら、カバーや帯に書いてある文を読んだ上でもう一度そのページを読み直してみて、理解できるかどうかをチェックする

この実験、ほとんどの人は「3」の段階ではまったく理解できないと思います。

東大生にも同じ実験をしてもらいましたが、実験に協力してくれた東大生は全員、3の段階では「理解できなかった」と答えました。しかし、彼らに「4」と同じことをしてもらうために「その本のカバーと帯を見てもいいよ」と言ったところ、ほとんど全員が「今度は理解できた」と言いました。

このように、東大生が文章を素早く、かつ正しく読解できるのは、「読む力」が優れているのではなく、「文章の外からヒントを得る力」があるからなんです。