「会社人間」文化に染まっていない女性には、男性たちが「仕方がない」「今までもそうだったから」とあきらめたり、見逃したりしていたことがクリアに見える。

「組織を変えたきゃ若者、よそ者、ばか者の視点を生かせ!」とはよく言われることですが、会社人間文化のよそ者である女性には、当たり前が通用しません。

男性には上司に「ノー」と首を横にふることも、「それはおかしい」と反論することも許されない。でも、女性にはそれができる。つまり、「女性の問題」とされることの多くは、女性の問題ではなく、男性上司が部下からの返答に戸惑っているだけ。絶対的多数派である男性が築き上げてきた「男社会の当たり前」に、新しい風が吹き込んでいるだけなのです。

紅一点の女性に、男性がかけるプレッシャー

そして「女はめんどくさい」と感じるもう一つの原因は、「0より1の功罪」です。

男性たちは自分たちの集団に女性がひとり入ると、自分たちが“男”という同質な集団だったことに気づき、その一枚岩を壊したくない、壊されたくないという思いが無意識に働き、「男性性」をまとった発言や行動をとるようになります。

これは企業コンサルタントで米ハーバード大学院のR・M・カンター博士の観察実験でわかったことで、男性だけの集団(=女性がゼロ)と、男性の集団に女性がひとりだけ入っている集団を比べると、後者のほうが「女性が聞くに堪えない話題を話す」頻度が増すのです(“Men and Women of the Corporation”より)。

例えば、女性の前で「あのときのラウンドは……」とゴルフの話題を多くするようになったり、女性がいるにもかかわらず“エッチな話題”をしたり、ときには「だから女は……」と陰口をたたくこともありました。

とりわけ「権力」をもつ集団では、男性たちは紅一点である女性に「男社会」への忠誠心を強要する無言のプレッシャーをかけます。「女性=異物」は排除されるか、同化を迫られるか、はたまた、屈辱的な扱いをされることに耐えるかの選択を強いられます。

同化した女性はいわば「スカートをはいたオジさん」で、会社人間文化にどっぷりはまった人。管理職になりたがらない女性が増えているのも、「男社会に同化している女性上司」に気後れしているのです。

つまり、「0より1の功罪」がある限り、階層社会の上位集団に女性をひとりだけ入れたところで女性活躍推進にはなりえません。