【岩瀬】それからもう1つ気づいたのが、完成されたものはすごくシンプルだけど、それを味わい深いものにするには、裏に色々と丁寧できめ細かなものがあってこそ奥深いのだと言うこと。これはビジネスにおいてもすごく大事なことで、シンプル-シンプルではダメなのだと思いました。つまり、シンプルなビジネスモデルにして、シンプルだけど、それがお客様に届いた時にそれが味わい深いものになるには、裏ですごく工夫して、考え抜かれていることが重要なのだと。
直感的なモノに説明書はいらない
【松嶋】シンプルとイージーは違うからね。
【岩瀬】そうそう。シンプルってなんだろうって考えますよね。
【松嶋】よく日本では色々なものを削ぎ落としてって言い方をするけど、削ぎ落としているだけじゃなくて、色々なものを研ぎ澄まして1つにまとめてるんですよね。
アップルの創業者がなんで日本まで来て禅寺に座禅を組んだのか? 座禅をしている先には禅寺の庭があって、宇宙のように複雑なんだけど、俯瞰してちょっと距離を置いてみると、これらが調和されているのを見て、スティーブ・ジョブズは色々と気づいたのかな、って。「禅」という時は「単純に示す」って書くんですよね。iPhoneも電源が入っていない時はとてもシンプルで、電源を入れて自分でカスタマイズしていけばこんなに複雑なことはない。“電源つけたら宇宙”みたいな(笑)。
【岩瀬】シンプルなものって美しくて説明がいらないけど、難しくもできるというか……。僕らが10年前に開業した頃は、「生命保険は難しい商材だから、インターネットでは売れません」と言われていたわけです。だけどアップルの製品について言えば、マニュアルはいらない、3歳児でも使える。ということは、十分シンプルにしたら別に説明書など必要ないし、直感的なものにすれば、生命保険もわかりやすく、もっと便利に、世の中へ提供できるのではないかな、と当時色々考えていたことを改めて思い出しました。
人の良さは「足す」のではなく「引き出す」
【岩瀬】それから料理教室でもう1つ気づいたのは、ほとんど塩を使わないこと。味の引き出し方というか。
【松嶋】ああ、話していたね、そのこと。