「ベタ褒め」しかできない安倍首相の情けなさ

それにしても情けなかったのが、安倍首相である。

米朝会談が終わった12日夜、安倍首相はトランプ氏と電話会談した。その後、官邸で記者団に対し、トランプ氏が日本人拉致問題を正恩氏に話したことを受け、こう表明した。

「トランプ氏の強力な支援を得て日本が直接北朝鮮と向き合い解決する決意だ」

対話路線への転換を明確にしたものだが、安倍政権は拉致問題進展を目指し、正恩氏との首脳会談を視野に入れ、日朝協議への道を具体的に探る構えのようだ。

要はどこまでも安倍首相はトランプ頼みなのだ。本来なら安倍首相が独自で首脳会談への道を切り開くべきだった。小泉純一郎首相のときはそれができた。だから実際に拉致被害者らが帰国できたのである。

今回の米朝会談でトランプ氏がどこまで拉致問題の解決を正恩氏に話したかは不明だ。北朝鮮の狙いは、日本を蚊帳の外に置くことにある。トランプ氏もそれを知っている。トランプ氏が日本の拉致問題にこだわればこだわるほど、北朝鮮は逃げていく。

そうなると、トランプ政権のぜひが問われる11月の中間選挙の結果が危うくなる。

「ここはとにかく史上初の正恩氏との会談を実現し、より多くの米国民の支持を得るべきだ」

トランプ氏はそう考え、米朝会談に踏み切ったに違いない。

日本の新聞はトランプ劇場にはだまされていない

幸いなことに日本の新聞はトランプ劇場にはだまされていないようだ。全国紙はいずれも6月13日付で1本社説を載せ、米国と北朝鮮との緊張は緩んだものの、「非核化に進展はみられない」などと批判していた。

たとえば読売新聞。「北の核放棄実現へ交渉続けよ」と主見出しを掲げ、サブ見出しで「『和平』ムード先行を警戒したい」と訴えている。

冒頭で「米国と北朝鮮が首脳同士の信頼関係を築く歴史的会談となった。緊張緩和は進んだものの、北朝鮮の非核化で前進はなかった。評価と批判が相半ばする結果だと言えよう」と分析し、「核保有に至った国に核を放棄させるのは極めて困難な目標である。その達成に向けて米国は粘り強い交渉を続けねばならない」と主張する。

終盤で読売社説はこう指摘する。

「声明には、トランプ氏が北朝鮮に体制の『安全の保証』を与え、米朝両国が『朝鮮半島の永続的な平和体制の構築』に取り組むことなどが明記された」
「金委員長が、体制の正統性をアピールし、国際的孤立から脱する材料に使うのは間違いない」
「懸念されるのは、トランプ氏が記者会見で米韓軍事演習の中止や在韓米軍の将来の削減に言及したことだ。和平に前のめりなあまり、譲歩が過ぎるのではないか」

その通りである。