悪意を持った巨大な権力体=既存のメディアが、祖国日本を貶めるために不都合な真実=東京裁判史観を押し付け、本当の歴史を遮蔽している。その真実=日本や日本軍は悪ではない、に目覚めなければならない。稲田も後発のネット右翼であった。が、彼女が凡百のそれと違ったのは、弁護士であるという社会的地位である。これにより稲田は、福井から代議士の道をひた歩むことになる。
よく言えば無垢、悪く言えば無教養
保守界隈に承認され、そこにぶらさがるネット右翼から熱狂的な支持をもって迎えられた稲田は、2009年に自民党が下野すると、ますます「初の女性総理大臣」としての待望論がくすぶるようになる。前述したように、稲田は「30歳を過ぎるまで」東京裁判のことすらろくに知らないと、自身によって吐露しているくらいのレベルである。
よく言えば無垢、悪く言えば無教養の稲田が、「百人斬り裁判」を契機に熱狂的な保守派・ネット右翼の支持を受け、衆議院議員になったところで「30歳」までの無学習の「つけ」が、帳消しになるものではない。
この自身でも認める無知・無教養ぶりを土台として打ち立てられた政治家・稲田朋美の政治観は、必然的に既存の保守、ネット右翼の開陳する既定の方針をトレースすることになる。
憲法9条改正は当然肯定、靖国神社参拝は全力肯定、教育勅語廃止と教育基本法によって堕落した戦後の日本人云々、選択的夫婦別姓絶対反対、在日外国人参政権絶対反対等々を開陳し、それら全てを「戦後レジームからの脱却」「美しい国」「目指すべき道義大国」などと、安倍内閣のスローガンと直線的に結びつけた。
稲田が特にこだわったのが、外国人問題である。与党民主党(当時)の政策で海外に住む子どもの分も申請できた「子ども手当」に反対の態度を鮮明にし、外国人への生活保護問題を執拗に国会で追及すると、その模様がユーチューブなどに転載され、その都度ネット右翼の喝采を浴びた。
この時期、民主党政権下でフラストレーションの溜まった自民党支持のネット右翼の多くが、「子ども手当」批判の論拠を稲田の理屈に求めた。巨視的に言えば「子ども手当」は出生率向上や子を持つ貧困世帯救済を目指した再分配制度だったが、稲田は「500人を超える国外の外国人の子息へ血税が使われると国が亡ぶ」として執拗に、支給の対象は日本国籍を持つ日本人に限ると強調した。