――全銀協会長として、地方銀行の未来・可能性はどこにありますか。

「金融」の前に顧客の「事業」や「生涯」をともに考えていくことです。各地域の事情や課題をよく理解し、人々と関係性を構築できているのは、やはり地域金融機関の強みですし、若年層が流出し過疎化が問題になっている地域もありますが、デジタルテクノロジーの進展で今後は都心に住み続ける必要性は薄れ、地方の相対的魅力は増してくるでしょう。地域金融機関が今後力を入れるべきは地方の魅力を生かす発想です。Uターンや移住者に対するきめ細かいサポート、海外旅行者を呼び込む町おこしや、新ビジネスを支援していく立場ではないでしょうか。

また中小企業の多くが海外でビジネスを行っています。地域金融機関とメガバンクが協力してスムーズにビジネスのバックアップを行える仕組みづくりも必要です。

テクノロジーの変革期は、大きなチャンスでもあります。大胆なゲームチェンジが起こるわけです。これを機に本当に人々に愛着を持っていただけるサービスやビジネスモデルを実現していきたいと考えています。

将来を悲観し、転職する銀行員が急増しているが…

――各行の人員・業務量削減計画を受け、転職を希望する銀行員が急増していると言われています。全国の行員にいま、何を伝えたいですか。

「銀行員の矜持をしっかり持とう」ということです。顧客、取引先、地域に感謝されて、初めてわれわれの仕事の喜びがある。働き方改革では、労働時間や働く場所ばかり注目されますが、それはあくまでも必要条件だと私は思います。十分条件は働く意義が感じられること、感謝されること、必要な存在だと認められること。そういう意味では、転職希望者が多いとの指摘については、そこに課題が残っているということだと、謙虚に受け止め、新しい一歩を踏み出すべきなのかもしれません。

▼QUESTION
1 生年月日、出生地
1961年6月29日、北海道静内町
2 出身高校、出身大学学部
福岡県立筑紫丘高校、早稲田大学商学部
3 座右の銘
自我作古
4 座右の書
『ながい坂』山本周五郎
5 尊敬する人
元財務事務次官・香川俊介氏(故人)、両親
6 私の健康法
妻との何気ない会話、妻との散歩
藤原弘治(ふじわら・こうじ)
全国銀行協会会長 みずほ銀行頭取
1985年第一勧業銀行に入行。ニューヨーク支店に赴任中、自費でニューヨーク大学経営大学院の夜学に通いMBA(経営学修士)を取得。IR部長、企画担当常務などを経て2017年にみずほ銀行頭取に。18年に全銀協会長。北海道生まれ、広島県尾道市出身。趣味は草野球で18年の目標はトリプルスリー(3試合出場し、3打席立ち、3回出塁する)。
(構成=三浦愛美 撮影=横溝浩孝)
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