80年代以降、世界は10年おきに金融危機を経験してきた。リーマンショックから10年。そろそろ金融危機が起きてもおかしくない。そのとき予想されるのは「1ドル80円」といった急激な円高だ。そして現在の日銀は、急激な円高を和らげる手段を持っていない。ドル円相場の「心地よさ」の裏にあるリスクとは――。
金融危機のきっかけが「米国利上げ」になる理由
残念ながら、金融危機はいつか来るものである。金融市場のグローバル化が進んだ1980年代以降、世界経済はおおむね10年おきに金融危機を経験してきた。ブラックマンデー(87年)、アジア通貨危機(97~98年)、リーマンショック(08年)である。
今年は2018年であるから、近年の経験則から言えば、そろそろ世界的な金融危機が生じてもおかしくはない。筆者を含めたエコノミストやアナリストの多くが、楽観と悲観の立場を問わず、心のどこかにこうした警戒感を持っていると言えよう。
ところで、1980年代以降の世界的な金融危機の背景には、必ずと言っていいほど米国の利上げがあった。つまり米国が景気回復を受けて利上げに転じたことがトリガーになって、その数年後に世界的な金融危機が生じたのである。
なぜ米国が利上げに転じると世界的な金融危機が生じるのか。米国が利下げを行うと、金融市場に大量のマネーが供給されることになる。ダブついたマネーは米国のみならず、世界各国の金融市場へと向かう。当然、世界各国の相場は上昇する。
その後、米国景気が回復し、利上げに転じれば、ダブついたマネーが米国に回帰することになる。そうなれば上昇が続いた世界各国の相場は下落することになる。この流れが何らかのショックを受けて一気に加速したとき、世界的な金融危機が生じる。
かなり単純化しているが、基本的にはこうしたロジックで、近年の世界的な金融危機は発生した。米国が利上げに転じたのが15年12月、既に2年半の歳月がたっている。マネーの米国回帰の影響がそろそろ出てきてもいい頃だ。