競争原理の2つのマイナス点
復興意欲を駆り立てるには、互いに商売を支え合う業界団体や組合だけでなく、お客さんとの絆も重要だ。そうした事例は神戸の震災にも数多くあるが、ここでは置いておこう。
今回の震災は被害の規模も深刻さも、神戸のそれを上回る。だが、仲間との絆やお客さんとの絆が復興の重要な決め手になることは変わらない。
前回の加護野先生の時論の中で、阪神・淡路大震災のとき、神戸製鋼がある部品の生産ができなくなり顧客に迷惑をかけることになったため、自らその製法をライバルに公開したという話が出ていたが、今回も同じような企業間の連携が生まれている。
過日の日経MJ(4月1日)に、福島県を拠点とするヨークベニマルが、震災被害にあって苦闘する姿が書かれていた。同社は、セブン&アイHDの中核会社であり、商品企画においても店舗運営においても、わが国のフロンティアを切り開いている小売企業である。
だが、今回の震災によって、同社は手痛い被害を受けた。倒壊した店、亡くなられた従業員およびその家族……。物流が途絶え商品供給も思うに任せない。そうした困難に直面するヨークベニマルを、本来であればライバルである同業各社が支援する。
新潟県を地盤とする食品スーパーの原信は、地元で、飲料水、おにぎり、パンなど緊急物資をかき集め、同社に向けて発送した。「2004年の中越地震で支援を受けた恩返し」だという。北関東で活躍するヤオコーも、被災したヨークベニマルの従業員やその家族のために、同社の研修センターを使うよう申し入れたという。埼玉県川越市の同センターには、食料・水に加え、寝具、洗濯機と乾燥機、医薬品などが準備されたという。
あるときはライバルとして競争し、あるときは足らないところを補い合う。社会は、こうしたバランスがあって成り立つ。しかし、言うのはやさしいが、実際にわれわれの社会では、そうしたバランスをとるのはなかなか難しい。どうしてか。