ダメ出しではなく「ここをこうすると、もっといいよ」と言う

スタッフに何かを直してほしいとき、改めてほしいことがあるとき、評価をフィードバックしたいとき、私は「褒めてから指摘する」ように心がけています。フィードバックとは、行動した本人に行動の結果を直接かつ具体的に教えてあげることです。

まずは相手のよいところ、評価したいところを褒めます。次に、「こういうところをこうしたら、もっとよくなるよ」と伝えるのです。

褒められて嫌な気分になる人はいないですよね。褒められると、嬉しくなったり、気持ちが高まったりするはずです。そのうえで、「ここをこうすると、さらにステキだよね」と伝えれば、相手は聴く耳を持ってくれるでしょうし、「そうしてみようかな」「やってみようかな」と思ってくれるでしょう。

自分の行動を具体的にきちんと褒められると心を開くので、その先の指摘も受け入れやすくなるのです。ですが、どうしても「こうしたい」「ここを直したい」と強い想いが走ってしまうため、ついつい褒めることを忘れ、指摘してしまうオーナーや店長が多いように感じます。グッとこらえて、まずは相手のよいところを見つけ、口に出しましょう。

「こういうことをがんばっているよね、知ってるよ。さらにこれに気をつけたら、もっとよくなるよね」こんな伝え方がいつでもできるように、「褒める・指摘する」の順番を実践してほしいと思います。

特定のスタッフを注意したいときには、「褒める・指摘する」の順番だけでなく、タイミング・場所・性格・わかりやすさ、この4点も意識してほしいと思います。

タイミングとしては、できるだけ“そのとき”に注意するのがよいです。気づいた時点ですぐに伝えましょう。後から注意されても、何のことを言われているのか、本人にはわからないかもしれません。時間が許すのであれば気づいた“そのとき”に、遅くともその日の内に話しましょう。

個人を注意するときは、場所を変えましょう。人前、特にお客さまの前ではしないことが前提ですが、あえてお客さまの前でという状況を選ぶこともあるかと思いますので、都度どこで行なうのが最適か考えてください。

そして、スタッフ一人ひとりの性格に合ったやり方を考えましょう。注意されたら落ち込むタイプなのか、逆に注意されると燃えるタイプなのか。それぞれ口調や言い方を変える必要があります。

「毎日がんばっているよね。品出しもありがとう。棚の商品をキレイに整えているときも、レジにお客さまが並んでいないか、常に気にしてね」
「いつも品出しありがとう。でも、レジのお客さまに気づくのが遅いよ。見えないときは仕方ないけど、お待たせしたなら小走りで急ぐこと。君ならできるはずだよね」

いかがですか? 同じことを注意していますが、相手の性格やキャリアによって、言葉やトーンを変えます。

わかりやすさとは、何を伝えたいのか、ポイントを絞って話すということです。怒ったり興奮したりすると、徐々に話が広がってしまうことがあります。ポイントを絞り、「ここをこうしてほしい」と、わかりやすい言葉を使い、もっとも伝えたいことを端的に言いましょう。

もし、まだ教えていないことならば、必ずそこで教えてあげます。教えてはいるけれど、スタッフの理解が足りないと判断したなら、もう1度きちんと説明しましょう。なかなかできるようにならないのは、教え方がよくないからかもしれません。違う言葉で伝え直す、口で言うだけでなく実際にやって見せる、横についてフォローしてあげるなど、指摘する側も工夫しましょう。