さまざまな要因が指摘されていますが、特に注目されたのが、消費者の買い物の仕方が食料品の分野でも変化したことです。リアル店舗とオンラインを併用するようになり、ホールフーズはネット化への対応が不十分だったことが、低迷の一因であるといわれます。

だからこそ、アマゾンへのホールフーズの身売りは、ネットとリアルの融合を象徴する出来事として注目を集めたのです。

アマゾンは生鮮品の分野でも業界を揺るがす

アマゾンの買収効果は、すぐあらわれました。ホールフーズは買収完了直後から、商品について最大で43%の値下げを実施。来店客数は、8月末に前年同期比25%の増加を記録しました。

鈴木 康弘『アマゾンエフェクト!―「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか』(プレジデント社)

「アメリカでもっともヘルシーな食料品店」を標榜し、オーガニック食品を数多くとりあつかうため、商品全般の価格はほかの食品スーパーと比べて、依然としてかなり高額です。

それでも、値下げが消費者の関心を引き、客足をのばすことにつながったのです。

その結果、価格競争が激化する懸念から、競合のスーパー大手、クローガーの株価は年初来で四割近く下落するなど、食品スーパー各社の株価は軒並み低下しました。

まさにアマゾン・エフェクトです。

アマゾンは、生鮮品の分野でも業界をゆるがし始めた。

店内を回りながら、「Amazon」のロゴ入りの値札を見てそう感じたのは、この値下げにこそ、単なる価格競争の次元を超えたアマゾンの経営理念と顧客戦略を読み取ったからでした。

買収効果は店舗でも、さまざまな面であらわれてくるでしょう。たとえば、ホールフーズはレジ待ちの時間が長いという課題も抱えていました。わたしが訪ねたときも、レジには行列ができていました。

ただ、2018年1月にオープンしたアマゾンゴーの技術が導入されればレジ待ちもなくなり、顧客の快適さが格段にあがる未来が予想できました。

鈴木康弘(すずき・やすひろ)
デジタルシフトウェーブ社長
1987年富士通入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業に携わる。99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役就任。2006年セブン&アイHLDGSグループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS執行役員CIO就任。グループオムにチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員も兼任。
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