※本稿は、「プレジデント」(2018年1月1日号)の特集「老後に困るのはどっち?」の掲載記事を再編集したものです。
男性より寿命の長い女性が主役に
日本は現在、65歳以上の人口が総人口に占める割合が25%を超え、4人に1人が高齢者の「超高齢社会」を迎えている。高齢者数は、2042年には4000万人弱でピークとなり、65年ごろには、約2.5人に1人が高齢者という時代を迎える。
女性に限れば、すでに3人に1人が高齢者である。65年には日本人女性の平均寿命は91歳を超える。人生100年時代も目前だ。実際、女性の4人に1人は95歳まで生きる時代に突入している。もちろん男性の平均寿命も延びるが、今後80代以上人口の絶対数が増えることを考慮すれば、日本は男性より寿命の長い女性が主役の「おばあちゃん大国」ということになる。
夫が亡くなると、一人暮らしとなる人が増加する。15年の国勢調査では、女性高齢者の一人暮らし世帯は21.1%だが、35年には23.4%にまで拡大する。女性高齢者には年金額が少ない人も目立つ。“買い物難民”など身の回りの不自由さから孤立するケースも出てこよう。健康を害することとなればそれこそ死活問題となりかねない。
高齢化社会が進展すると、病院や介護施設不足とともに、火葬場や霊園もパンク状態に陥る。厚労省の調査によれば、死亡者数は16年に戦後最多の130万人余を数えたが、40年前後にピークの170万人近くにまで膨らむ。多くの人が亡くなる「大死亡時代」になる。現在でも東京圏では時期や場所によっては火葬場の予約に1週間程度は待たされるケースがあり、その間の遺体を安置するサービスまで登場している。離れた地域で葬儀を開く例もあるが、これまでより費用がかさみ、負担が増すことになる。施設を増やそうにも地域住民の理解がなかなか得られないという事情もある。
一方、超高齢社会は、働き手世代の「高年齢化」も招く。20代、30代の社員が減れば、ベテラン社員の負担を増やし、定年延長などによって対応しようとする企業も増えるだろう。新たな発想が生まれにくくなり、職場全体が停滞すれば労働生産性も上がらなくなろう。
一刻も早く超高齢社会の弊害を明確化し、対策を講じなければ日本社会は大きく揺らぐことになる。
産経新聞社論説委員
1963年、名古屋市生まれ。中央大卒。専門は人口政策、社会保障政策で、内閣官房有識者会議委員などを務める。近著にベストセラーとなった『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』。