総括すると、教科を問わず、携帯・スマホの使用時間が長い群は学力が低く、それは自宅学習時間の短縮とは関係がなさそうであることがわかります。

グラフ1-1から1-4でみえてきたことを、以下にまとめます。

・長時間携帯やスマホを使用する生徒の学力は低い。
・携帯やスマホの使用による家庭学習時間の減少が、直接学力低下の原因となっている可能性は低い。
・自宅学習をほぼ行っておらず、かつ携帯・スマホ使用時間の長い生徒たちの成績が低くなっていることから推測すると、学校での学習に悪影響を与える何かが生徒の脳に生じた可能性がある。

さらなる実験の開始

平成25年度の仙台市の調査結果を受け、私は、携帯・スマホの使用が子どもたちの学力に強い負の影響を与えているかもしれないことに驚き、学習によって獲得した記憶を消し去っているかもしれないという可能性に恐怖しました。

『スマホが学力を破壊する』(川島隆太著・集英社刊)

同時に、平成25年度の調査自体に、スマホと携帯を区別していないなど、設定上いくつかの問題点があることも浮かび上がりました。とはいうものの、携帯電話を使ったインターネット使用は平成28年度のデータで約2.0%に過ぎず、半数近くの生徒はスマホでインターネットを使用しているのが現実です(平成28年度の内閣府政府統計「青少年のインターネット利用環境調査実態調査」より)。ですから、そのインターネット使用による影響は、主にスマホによる影響であると考えられます。

平成25年度の調査に含まれるもう1つの大きな問題点は、睡眠の影響に関してです。教育の世界では一般に、睡眠時間の短い子どもたちの学力が低いことは「常識」になっていました。携帯・スマホの使用時間が長いことで睡眠時間が短くなる場合があるために、学力の定着が悪いことが考えられます。「携帯・スマホの使用」が直接に成績へと影響を及ぼしているのではなく、単に睡眠不足のために学力が下がっている可能性があるということです。

こうした問題点を解消すべく、私たちの研究グループはさらなる調査を行い、スマホ使用と学力に関する驚きの事実を明らかにしました。詳細は拙著『スマホが学力を破壊する』(集英社新書)で紹介しています。ぜひ、ご一読ください。

川島隆太(かわしま・りゅうた)
東北大学加齢医学研究所所長。1959年千葉県生まれ。1989年医学博士(東北大学)。全世界でシリーズ累計販売数3300万本を突破したニンテンドーDS用ソフト「脳トレ」シリーズの監修者。著書は累計600万部を突破した「脳を鍛える大人のドリル」シリーズをはじめ、『現代人のための脳鍛錬』(文春新書)、『さらば脳ブーム』(新潮新書)など多数。