携帯・スマホの使用時間が長い子どもの学力が低いと聞くと、教育関係者を含む多くの人は、それは自宅で勉強しないで携帯・スマホを操作しているのだから低くて当たり前だと考えます。しかし、グラフから読み取れるように、自宅で勉強をしている生徒も、していない生徒も、等しく成績が低下しています。すなわち、家庭学習時間の減少が学力低下の直接の原因である可能性は低いと考えることができるのです。

私が特に深刻にとらえたのは、家でほとんど勉強をしない生徒たちのデータです。家で勉強をしない生徒たちは、当たり前のことですが、学校でしか勉強していませんから、学校の授業を受けた時に作られた知識・記憶によって、テストの成績が決まります。

学校の授業を受けただけの状態で数学の試験を受けると、平成25年度の試験では平均で約62点の点数がとれています。それが、携帯・スマホを1時間以上使うと、使った時間の長さに応じて成績が低下してしまうのです。4時間以上使うと15点も低くなっています。

2時間も自宅で勉強して、知識や記憶が増えたはずなのに、4時間以上携帯・スマホを使うと、自宅学習の分はおろか、学校で学んだことまで相殺されてしまっているのだとしたら、これは由々しき事態ではないでしょうか。

この結果から想定される最悪の仮説は、携帯・スマホを長時間使うことで、学校での学習に悪影響を与える何かが生徒の「脳」に生じたのではないかというものです。可能性(1)は、学校の授業で脳の中に入ったはずの学習の記憶が消えてしまった。可能性(2)は、脳の学習機能に何らかの異常をきたして学校での学習がうまく成立しなかった。どちらが正しいかはわかりませんが、ただ事ではないことは間違いありません。

数学以外の教科では?

携帯・スマホを使うことで点数が下がってしまうのは、数学だけなのでしょうか? 他の科目のデータも見てみましょう。グラフ1-2は国語、1-3は理科、1-4は社会の成績です。理科と社会では、数学と同様に携帯・スマホの使用時間が長いほど成績が低くなる傾向が顕著でした。国語は、テストの性格の違いもあってか、成績の低下率が弱いように見えます。