アメリカのアジア政策は、1969年のニクソン・ドクトリン以来、「アジア地域での軍事的な紛争には、アメリカは必要に応じて援助するが、関係諸国自身の努力によって解決することを第一義とする」という方針で展開されてきました。朝鮮半島については、「韓国主導の防衛体制構築、軍事指揮権の韓国返還、米韓連合軍の解体、南北平和協定締結」がその構想です。在韓米軍撤退を見据えたこのアメリカの戦略方針は、その途中で挫折はあったものの、一部がすでに実行されながら、現在に至るまで、一貫して生き続けています。トランプ政権の方針も、これと大きく変わりはありません。
ジミー・カーター元米大統領は1977年、韓国軍と北朝鮮軍の戦力は「互角」であるという判断から、「在韓米軍全面撤退計画」を打ち出しました。しかし、やがて「北朝鮮軍優位」との事実が明らかになると、この計画を保留しました。これは逆にいえば、アメリカが「韓国はミサイル防衛システムの完備によって、北朝鮮に対抗しうる自主防衛能力を備えた」と判断した時点で、在韓米軍撤退への道が開かれる、ということです。
核を持つ「統一朝鮮」誕生という脅威
文在寅の韓国政権が描いている近未来シナリオは、「軍事指揮権返還→米軍撤退→南北平和協定締結」から「南北連合国家形成→南北統一国家実現」へという流れになるでしょう。この流れが、いつの日か起こるであろう流れであるのは確かです。また、現在の世界では、多くの諸国がこうした流れが起きることを望んでいるかもしれません。しかし私は、いまは歓迎どころか、なんとしてもそれを止めなくてはならないと考えています。
なぜなら、現状のままでの南北和平は、北朝鮮の核兵器と独裁体制をそのまま温存してしまうからです。そうなれば、北朝鮮の人権問題が解決されないことはもちろん、経済・文化のみならず南北の軍事・情報工作が一体化することで、日本に対して強大な「反日」攻勢が行われることが、容易に予想されます。