家族の資産は不動産や預貯金合わせ1.2億以上
長男はお金の管理ができないため、父親が老人ホームに引っ越してからは、所有する雑居ビルの管理を長女が引き受けることになりました。基本的に管理は、管理会社に任せているものの、築40年余りで老朽化が進み、修理や修繕のリクエストが頻繁にくるといいます。
また、税務処理のため税理士とのやりとりもあり、負担が大きい。これがいつまで続くのかと考えると精神的な苦痛を感じるようになったそうです。長女にも、まだ、手のかかる子ども(8歳、3歳の男児)がおり、近い将来、長女の夫が転勤になる可能性もあります。
今後、雑居ビルは大型修繕などによる大きな支出が予想され、不安がつのるばかりでした。そんな時に、不動産管理会社から雑居ビルの売却の話が舞い込んできたそうです。
長女は言います。
「長男の放っておくことはできません。ただ、私にも家族との生活があり、サポートできることには限界があります。私としては、雑居ビルは、手放してすっきりしたい。でも、雑居ビルから得られる賃料は、父親や長男の生活を支える収入源です」
「兄には、やや浪費癖あり、父親が家を出てからは私にもお金の無心をすることがあります。夫も、『将来、義兄への経済的支援が必要となるのでは?』と不安をもらしています。財産の相続は期待していません。兄が生きていくための生活費を確保できれば、それでいいと思っています」
何より、今の重圧から解放されたい。そんな悲痛な訴えでした。長女は、雑居ビルの保有は負担が大きくなるばかりで、このまま保有し続けるのは難しい、と考えています。父親も「ビル売却の判断は長女に任せる」と言っているようです。
▼所有する雑居ビルを売却すれば6500万円
ファイナンシャルプランナーである私は、雑居ビルの売却後、父と兄の生活に問題は出ないのか、確認する必要があると考えました。状況をまとめると以下の通りです。
<家族構成>
父親:80歳 年金受給者
長男:48歳 無職(障害年金受給)
長女:42歳 既婚 夫と子2人の4人家族
<父親の資産状況>
父親の預貯金:2500万円
長男の預貯金:2000万円(20歳~障害年金を貯めてきたもの)
雑居ビル 1棟:6500万円(売却時の概算手取り額)
賃貸用ワンルームマンション:1300万円(売却時の概算手取り額)
<手取り収入>
父親:102万円(公的年金)
500万円(雑居ビル・賃貸用マンションからの収入 ※税金や経費引き後)
長男:78万円(障害年金2級)