個人間取引に「第三者預託」機能を提供し安全を担保

メルカリのネットフリーマーケットの仕組みを確認しておきましょう。メルカリは、基本的にスマートフォンを利用して全ての手続きが完結するようにシステムが設計されています。自分の持っているものを売りたい、つまり出品する側は、商品を撮影して必要な情報を入力し、自ら価格を設定します。売り手が価格を決めるというところがオークションとは異なる点です。購入する側はメルカリのスマホアプリ上でほしい商品を探し、「その値段だったら買ってもいい」となれば支払いをして購入する、という流れです。

ここで、購入者が支払った代金は、いったんメルカリが預かっておくことになります。メルカリは出品者と購入者の取引プラットフォームを提供しているのですが、このように、商取引において、第三者の仲介によって取引の安全を担保する仕組みを「第三者預託(エスクロー)」と言います。出品者から購入者に商品が届いて、「これで納得した、問題ない」ということをメルカリが確認してから、代金から10%を差し引いた額が出品者へと支払われます。これが一連の取引です。

業者も受け入れるヤフオク、厳しく排除するメルカリ

メルカリとヤフオク!との違いを次の表にまとめました。まずは前述の通り、価格を出品者が決めるか、入札によって決めるかの違いがあります。またヤフオク!では出品手数料として月額の固定料金を支払わなければなりませんが、メルカリでは出品手数料は無料で、売りたい時に自由に出品できます(※)。

※編集部注:ヤフオクは、2017年2月に月額会員費無料で利用できる「フリマ出品」を導入している。

ヤフオク!に比べより手軽な出品・売買が可能なメルカリ

成約手数料はメルカリの10%に対しヤフオク!は8.64%と若干低くなっていますが、出品手数料の有無との兼ね合いを勘案する必要があるでしょう。決済は両者ともエスクロー方式を採用していますが、ヤフオク!では当事者間の直接決済も併用。虚偽の出品といった不正防止などの面からもエスクロー方式は必要でしょう(※)。

※編集部注:ヤフオクは、2018年3月より銀行振込などの直接決済を禁止し、エスクロー方式のみとなっている。

ユーザー層について見ると、メルカリは若い女性が中心ですが、ヤフオク!は男女ともに、そして幅広い年齢層に利用されています。ユーザーの使用デバイスは、メルカリはスマホ中心ですが、ヤフオク!はPC中心です。ヤフオク!はスマホアプリも提供していますが、スマホの登場以前からサービスを開始していたという歴史的な経緯が背景にあります。出品者の特徴としては、ヤフオク!では古物商や転売屋も多く見られるのに対し、メルカリではそうした業者を排除しています。

フリマアプリに限らず、アプリ市場は参入障壁が低く、有望市場には個人事業主から大手企業まで多くのディベロッパーが群がります。フリマアプリも2012年以降多くのサービスが乱立、そしてわずか数年のうちに淘汰が進み、撤退する企業が相次ぎました。

撤退した企業にはヤフーやLINEなどの大手も含まれます。そのような状況のなか、メルカリはやや遅れて参入したにもかかわらず、今やユニコーン企業となるまでに躍進を遂げました。同社はいかにしてフリマアプリで圧倒的な地位を築いていったのでしょうか?