一番成績が良かったのは誰だろう? なんと、幼稚園に通う6歳児だった(一番成績が振るわなかったのはMBAコースの学生たちだった)。園児たちは計画性に優れていたのだろうか? いや、違う。彼らはスパゲティの特性やマシュマロの硬さについて特別な知識を持っていたのだろうか? それも違う。
では、園児たちが成功した秘訣(ひけつ)は何だったのか? ただがむしゃらに飛びついたのだ。ワイズマンの言う「運がいい人」のように、たくさんのことを次々と試した。彼らは何度試してもたちまち失敗したが、そのたびに、めきめきコツを習得していった。
つまり、見本をつくっては試す、つくっては試す、つくっては試す……と、時間切れになるまでひたすらこれをくり返すのが、園児たちのシステムだった。定められた道筋がない場合には、このシステムが勝利をおさめる。
シリコンバレーでも昔から「早く失敗して、損害を小さくしよう」と言われてきた。小さな実験をたくさん試して一番良いものを見きわめるというこのやり方が、身長120センチ以上の人々、つまり私たち大人にも有効なことは、研究によって証明されている。
「無敗のバットマン」モデルの難点
このやり方を早速取りいれるのはどうだろう? とても簡単だ。私たちはともすれば失敗を恐れすぎる。しかし失敗を避けようとすることに、それほど意味があるだろうか?
この質問に答えるために、ほかにも幼稚園生が日ごろ考えていることを調べてみる必要がある。
例えば彼らは、バットマンになりたいと考えている。バットマンになるのはもちろん簡単ではない。まず、武術の過酷な訓練を受けなければならない。しかし、成功との関連でもっとはるかに面白い質問はこれだ。
「どうすればバットマンであり続けられるのか」
実はこれが、なぜ私たちは失敗をとても恐れるのかという疑問に答えてくれる。
バットマンは、最も頻繁に引き合いにだされるスーパーヒーローの一人だ。バットマンは超能力を持たないふつうの人間だ。億万長者で、目新しい道具のコレクションを持っていることはたしかに強みだが、それがバットマンであり続ける、すなわち「1度として負けられない」という最大の難問の解決になるわけではない。