「しがみつく」から「前向きなチーム」に
どのチームでもそうだが、特にVF甲府にとって、スポンサーや自治体といったステークホルダーとの連携強化は大切だ。大資本の支援がないなか、大口スポンサーとは良好な関係を築きつつ、甘えることもできない。
「昨年のシーズン終了後、主だったスポンサーには、ごあいさつとJ2降格のおわびにうかがいました。勝ち点1の差で降格という結果には、一定の評価もいただきましたが、プロは結果がすべてです。『今回の降格をきっかけに、いつまでも“しがみつくチーム”から、もう少し“前向きなチーム”をつくってほしい』という要望もありました」(佐久間氏)
一方の行政に対しては、経営破たん寸前となった歴史も踏まえ「ヴァンフォーレ甲府経営委員会」でも事業報告を行う。県の資本も入っているからだが、ここでは個人会員が微減しているような課題も伝え、山梨県のプロサッカーチームとしての危機感も共有する。
「地域財産」の存在意義も高める
県の主導で動き出した「総合球技場」(サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールなどの球技専用スタジアム)建設計画――。この計画スタートまでには、1スポーツチームの枠を超えた働きかけも行った。
「総合球技場には『行政課題』を克服する一面も求められます。そこで、試合日以外にどう活用されるべきかといった『スポーツ施設としてのあり方』も提案しましたし、『災害時の備蓄倉庫』としての役割にも訴求しました」(佐久間氏)
チームの存在が、公的に評価されたケースもある。2月23日、JR甲府駅南口に「バナーフラッグ」が設置された。今季のホームゲーム開催日前後にはこの旗が掲げられる。2017年3月に山梨県とヴァンフォーレ山梨スポーツクラブ(VF甲府の運営会社)が締結した「包括連携協定」が形となったものだ。
今季のホームゲームで、甲府駅前のこのフラッグが誇らしげにはためくか。開幕戦で敗れたチームにとって、一丸となった戦いで成果を示さなければならない。
経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。