PCやスマホの普及で「目」を酷使する場面が増えている。そのため「眼精疲労」、つまり目の疲れを訴える人も多い。眼精疲労の専門家である森岡清史医師は、その改善のために東洋医学の「ツボ押し」の併用を勧めている。目の疲れを緩和し、近視の改善にも効果があるというツボ押しのポイントとは――。

※本稿は、森岡清史『1日3回ツボを押すだけで目はすぐによくなる!』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

目の不調の根本原因は眼精疲労

私は、専門である「眼精疲労」の治療法を模索する中、以前から興味のあった東洋医学の「ツボ押し」を学んで治療に取り入れ、院内の眼精疲労治療室にて実践しています。

眼精疲労は、白内障などのように手術で治療するものではなく、あくまで目の周りの筋肉が疲労し血流が一時的に滞った状態からくる症状です。そのため、その治療・改善について科学的なエビデンスを示すことは難しいのですが、私はこれまで15万人以上の眼精疲労の患者さんを診てきた結果として、数多くの患者さんにご満足いただいています。

例えば30代男性の患者さんは、仕事で長時間PCに向かう日々をすごし、頭痛や目の奥の痛みなども訴えていました。しかし、ツボ押しを取り入れた初回の治療で症状の緩和がすぐに見られ、実際、2回目の治療で驚くほどの改善を見せました。

これは、一般的に「腰痛やひざ痛などに効く施術」という印象が強い「ツボ押し」が、眼精疲労の諸症状(それ由来の近視、老眼など)に有効に作用している結果の一つだと考えられます。

今回は、この眼精疲労に起因する「近視」を取り上げ、その症状を緩和・改善するツボ押しについてご紹介します。

近視は「仮性」と「真性」の2種類

目がリラックスした状態で、ピントが網膜上でぴたり合うことを「正視」と言います。この場合、近くも遠くもぼやけずにものを見ることができます。一方、網膜の手前でピントが合うことで、近くはよく見えるが遠くがぼやけてしまう状態になるのが「近視」です。

実に日本人の6割は近視と言われますが、近視にはいくつかの種類があります。その中でも特に多いのが「仮性近視」と「真性近視(軸性近視)」と呼ばれる近視です。

「仮性近視」は、近くを見続けることでピントを調節する毛様体筋が緊張してこわばり、元に戻らなくなる状態のことで、一時的に遠くが見えにくくなります。それに対して「真性近視」は、眼球の形が正円形から楕円形になるのが特徴です。