ゲームは無料を徹底するが、ライブには1万8000円も使う
タダ・ネイティブたちはインターネットを使えば、気になるものをすぐに調べることができます。そのためゲーム好きの子どもであれば、そのゲームソフトは持っていなくても、ゲームの「プレイ動画」を見ているのでそのゲームについてやたらと詳しい、ということが珍しくありません。お金を使わなくても、ゲームを楽しむ手段があるのです。
しかし、だからこそ「その場に行かなければ楽しめない」というイベントにはお金を惜しみません。たとえば、ある中2の女の子の場合、テレビアニメは無料のYouTubeで見ていますが、映画の劇場版は毎年公開初日に観ているといいます。初日には舞台挨拶があり、そこで原作者や声優に会えるのを楽しみにしているそうです。
また、スマホゲームにはまっている中2の男の子は、ゲーム自体は無課金で遊んでいるものの、ゲームの音楽を演奏するコンサートには2日連続で参加。チケット代として(一緒に行った親の分も含め)1万8000円も使いました。
いつでもどこでも、あらゆることをデータベースから引き出せるのが当たり前のタダ・ネイティブ世代。そんな彼らが価値を感じるのは、その場所・その時にしか味わえない、再現性のない体験なのです。
このことは調査結果にも表れています。貯金以外のおこづかいの使い道が軒並み過去最低となるなかで、「映画やコンサートのチケットを買う」という項目だけは過去最高となり、97年比では9ポイント以上のプラスとなりました。生活者の関心がモノからコトへ移ったといわれて久しいですが、タダ・ネイティブ世代には、大人以上にその傾向が見られます。
マンガの人気に「貢献」するために課金
タダ・ネイティブ世代は、好きなものに対して何らかの貢献ができる機会にも惜しまずお金を使います。たとえば小4の女の子は、あるマンガのキャラクターを「週刊少年ジャンプ」の人気投票で上位にするために、同じ号の週刊誌を何冊も購入しました(※キャラクター人気投票は、週刊誌の特定の号についている投票紙でしか投票できない)。その行動はまるで、「AKB48選抜総選挙」で推しのアイドルを上位にするためにCDを買い込むファンのようです。
また、「Comico」というアプリでオリジナル漫画を読んでいる中2の男の子も、好きな作品の作者を応援するために課金したいと話します。Comicoには課金することで作品や作者を応援できる「応援ポイント」という制度があり、このポイントの累積ランキングで下位になると打ち切りになってしまいます。彼の好きな作品はちょうど当落線上にあるので、連載を続けられるように支えたいのだそうです。
こうした「自分が支えなければ!」という思いの高まりは、ランキングや視聴数などからコンテンツの人気がリアルタイムでわかるようになったことや、作り手との距離が縮まっていることが影響しています。
たとえばComicoでは、多くの作者が「あとがき」で読者のコメントにリアクションを返しています。また、最近ではマンガやゲームなどのイベントに作者が登場することも多く、前述の中2の男の子は作者の近況についてかなり詳しく知っていました。自分が貢献することによる手ごたえを感じやすい環境になったことで、作り手を支えたいという思いが高まっているのです。