銀行は何に特化して、生き残ればいいのか
銀行の未来像には4つの形態があると私は考えている。法人向けか個人向けかの軸、そしてプラットフォーム重視か、カスタマイズ重視かの軸によって、「モバイル型」「クラウド型」「投資銀行型」「プライベートバンク型」に分かれる(表参照)。
プラットフォーム重視で個人向けの「モバイル型」は、個人にスマホなどを使って決済や資産形成といったサービスを提供するプラットフォームだ。前述した中国のアリペイが理想形といえよう。
同じくプラットフォーム重視で法人向けの「クラウド型」は、決算データや取引データをもとに企業の資金ニーズを把握。それを機械的に分析し、リスク内容を判断したうえで貸し出しを行う。これは銀行よりも、データや商流を押さえているアマゾンのようなEC事業者が商機を見出しやすいだろう。また「モバイル型」「クラウド型」は、テクノロジーの発展が鍵を握る分野であるため、今まで人が手がけていた仕事が、機械に代用される可能性も高い。
自社のテクノロジーを活かせない銀行は、カスタマイズ重視の軸で生き残るしかない。そのうち法人向けの「投資銀行型」は、企業に対するコンサルティング、資金調達、融資を行うもので、銀行本来の姿ともいえる。とはいえ、原点にただ立ち返ればいいわけではなく、今後はグローバルな案件にも対応し、海外拠点の拡大や連携も必要になる。メガバンクはまだしも、多くの地銀は対応しかねるのではないか。
そうなると地銀に残された道は、ただひとつ。富裕層に資産運用アドバイスを行う、カスタマイズ重視の個人向け「プライベートバンク型」への転換だ。しかしこれは日本にはなかなか根づいていないビジネス形態である。日本の富裕層は土地保有者が多く、資産運用は金融商品や預金に限らない。顧客によっては不動産、相続、税務、会計など、銀行本来とは別の専門知識が必要とされるだろうし、それらのアドバイスができる人材が不可欠になる。