取引先の人や上司との宴席。下手におだてれば、すぐに見透かされて疎んじられてしまう。どうしたら、気持ちよく相手を持ち上げられるのか。プロの太鼓持ち・櫻川七好さんにその奥義を披露してもらった――。

馬鹿のメッキをした利口者の「修羅場」芸を見よ

花柳界には、「太鼓持ち」という独特の生業があることをご存じだろうか? 太鼓持ちは「幇間」ともいい、宴席で小噺や踊り、物まねといった座興を披露するほか、客の話に付き合ったり、酒やゲームの相手をしたりもする。基本的に男性の仕事なので、女性の芸者に対して「男芸者」と呼ばれることもある。その歴史は古く、豊臣秀吉の御伽衆(おとぎしゅう)(芸能に優れた側近)が起源という説もある。戦前までは、料亭のお座敷には欠かせない存在だった。

太鼓持ちはひと言でいえば、マルチなエンターテイナー。宴席を盛り上げて、客を喜ばせるプロの「宴会部長」だ。そこが、落語家や手品師といったほかの芸人とは異なる。現在は浅草に6人しかいない太鼓持ちの1人である櫻川七好さんが説明する。