経産省は、14年策定のエネルギー基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、2030年度にその電源構成比率を20~22%に高めると目標を掲げた。16年度の比率は1.7%にすぎないにもかかわらず。この政策決定が、基幹送電線の上にドンと載っていて自然エネルギーがアクセスできないという構図になっている。

純国産の自然エネルギー100%が危機に一番強い

他にも「政策障害」はある。吉原氏は語る。

「風力は、何年もかかる環境省の『環境影響評価(アセスメント)』が妨害をしています。低周波云々とよく言いますが、つい先日も北海道の石狩平野の高さ80メートル、羽根の長さ50メートルという巨大な、2.3メガワットの発電所を見てきました。近くにいけばウオンと音がしますが、離れればほとんど音も振動もない。まわりは海岸線で民家もない。過剰に反応しています。低周波問題はデマゴギーですね。それを見抜かねばなりません」

写真=iStock.com/paylessimages

よく日本は資源小国なので、さまざまな危機に備えて、火力、水力、自然エネルギー、原子力と多角的にリスク分散しなくてはならない、と言われるが……。

「私は純国産の自然エネルギー100%が、一番危機に強いと思います。自然は不安定だというのなら、スマートグリッドやネガワット発電所、それと巨大な蓄電池である『揚水発電所』を使えば、十分に需給調整ができます。日本の自然エネルギーのポテンシャルは非常に高い。原発即時ゼロで日本経済は発展します。原発を再稼働しても有効需要は増えず、経済は成長しません。しかし、再稼働せず、自然エネルギーに置きかえれば有効需要は増え、大きく成長します。原発50基分を太陽光発電に切り替えると、7兆5000億円の設備投資が必要となり、ケインズの乗数理論に基づいて計算すると、30兆円の景気拡大効果が発生し、GDP年間6%の成長要因になります」

日本でも、FITの買い取り価格42円でスタートした太陽光発電は、比較的早く広まった。しかし、FIT導入から5年が過ぎ、買い取り価格は半分の21円に下がった。価格低下で太陽光のうまみも減ったのではないか。

「さすがに半値になれば、技術的工夫をしなくてはいけません。工法が画期的に効率化されました。固定価格42円のときの利益率が10%、21円のいまでも10%の投資効率があるぐらいです。例えば、1kWの太陽光パネルが数年前は1枚15万円だったのが、いまや3万円。2万円にもなろうかとしています。コストが劇的に下がっているんです」