しかし、接客についてはそうではない。もちろん基本的なルールがあり、それは指導されるが、マニュアルはない。そのときどきにおいて、ふさわしい対応を心がける、というのが、JALの考え方なのだ。

訓練後は職場に戻り、上司や先輩に学びながらのOJTを通じて、自分なりのサービスを作り上げていく。そして、そのベースになるのが、破綻後のJAL再生の礎になった行動哲学「JALフィロソフィ」である。ここから、調査ランキングで1位に選ばれるような接客サービスが生まれていったのだ。

おもてなしの接客10原則とは

書籍では多くのグランドスタッフや教官、教育体系の作成者などに取材で話を聞いた。そこから、「身だしなみ」「表情」「立ち居ふるまい」「事前準備」「意識」「コミュニケーション」「行動」「難しい自体への対応」「習慣・トレーニング」「サプライズ」の10項目にわたって、グランドスタッフに学ぶことができる、おもてなしの接客10原則「66のスキル」をご紹介している。印象的だったものをいくつか紹介してみよう。

「統一美」を意識する

空港の雰囲気が好き、という人も多いと思うが、その空気案を作っているもののひとつに、間違いなく空港スタッフの姿がある。キリッとした雰囲気は、彼女ら彼らによるところが大きい。実際、パッと見てすぐにグランドスタッフとわかる。どうしてそんな印象が作り上げられているのかというと、「統一美」が意識されているから。統一されている美しさ、そろっている美しさ。髪型、化粧、制服の着こなし方などが、きれいに統一されているからこそ、あの独特の雰囲気は作り出されている。そして、そうした統一美を一人ひとりが意識している。

お洒落と身だしなみは違う

新入社員の訓練で徹底的に教えられるのが、これ。「お洒落は自分のためにするもの。見出しなみは、お客さまのためにするもの」。ここを勘違いしてはいけない、と。「お洒落がしたければ、仕事を離れたところで、いくらでもすればいい。しかし、お客さまの前に出る仕事では、あくまで身だしなみを意識しないといけない」。

一方通行の挨拶から始めない

グランドスタッフが心がけているのが、相手も話しやすくなるような、相手から引き出せるようなコミュニケーションをすること。こうすることでニーズも聞き出せる。そのためにも、相手から言葉が返ってこないような発信はできるだけしない。例えば、「いらっしゃいませ」から始めない。これでは相手は返せない。では「おはようございます」ならどうか。引き出すようなコミュニケーションを目指している。最もハードルが高いのは第一声。挨拶の言葉は極めて重要。