しかも、目の前でどんな話がやってくるか、聞くまで想像もできない。その場で迅速に、さらには正確に対応しないといけないのである。さらに、悪天候で飛行機が飛ばない、なんて場合にも対応しないといけない。
いかに「お客さまに寄り添う」ことができるか
これは、究極のサービス、といえるのではないかと感じた。なんといっても、エアラインへのサービスの期待は、他の産業ではありえないほど高いのが、日本でもある。その徹底したプロフェッショナリズムやおもてなしの精神は、エアラインでサービスを提供する人たちの垣根を越え、サービス業に携わる多くのビジネスパーソンの参考になると強く感じた。
サービスというのは、実に面白いもので、受けている側が「心地がいい」「幸せな気分」と感じれば感じるほど、サービスを提供している側のたゆまぬ努力が隠されているものである。
取材をしてみると、「ここまでやっているのか」「こんなところまで見ているのか」「こういうことを考えているのか」という驚きの連続だった。なるほど、こんなふうにしてJALらしい「心づかい」は実践されていたのかと驚かされた。
JALでは、目指すべきグランドスタッフの仕事をこう定義している。
「お客さまに寄り添う」
スピーディーに、正確に、しかも笑顔で、乗客に寄り添う。同社の行動哲学「JALフィロソフィ」をベースにしながら、この難しい仕事に挑んでいるのが、グランドスタッフなのである。
新入社員の訓練はわずか2週間
取材前、想像していたのは、さぞや教育に時間がかかっているだろうな、という思いだった。しかし、驚かされたのは、新入社員の訓練はわずか2週間ほどしかない、ということだ。
ともすれば、チェックインカウンターや搭乗ゲートでの対応は、すべてマニュアルでガチガチに固められているのではないか、というイメージを持つ人もいるかもしれないが、それも違う。
もちろん身だしなみや立ち居振る舞いに関しては厳しい指導が行われる。ちょっと前まで、のんびりと学生生活を送っていただけに、キリッとした、あの空港での立ち姿がすぐにできるはずがない。JALのグランドスタッフのためだけに作られた「JALスタイルブック」をベースに、担当教官の厳しい指導のもと、徹底的に鍛え上げられる。落ちているゴミの拾い方ひとつとっても見ても、ふさわしい動きと、そうでない動きがあるという。