これから北朝鮮はどうなるか。現実的なシナリオは、中国、ロシア、韓国、日本、アメリカの5カ国による「国際共同管理体制」での体制転換だ。そしてその主役は中国となる可能性が高い。東京外国語大学の篠田英朗教授は「もしそうなれば朝鮮半島での中国の影響が強まり、日本の地政学リスクは高まる」という。日本はどうすべきなのか――。(第3回)
国際社会が北朝鮮に譲歩する機運は過ぎた
北東アジアに位置する日本にとっては、北朝鮮問題が大きな関心事項であることは間違いない。2015年に安保法制が議論されていたときには、意外にも、朝鮮半島との関連性はあまり論じられなかった。しかし2017年には、日本にとって集団的自衛権の問題を含む最大の安全保障上の課題が、朝鮮半島情勢にあることが明らかになった。
国際情勢は、政治指導者層の判断や思い込みによって、大きく結果が変わるところがある。金正恩・朝鮮労働党委員長の気分の変化一つで、戦争は起こったり、起こらなかったりする。金正恩氏の考えで、北朝鮮が核開発を放棄するのであれば、それは誰もが歓迎する。しかしそれを引き出すために、国際社会の側が何らかの譲歩をするような機運は、過ぎ去っている。現状では、信頼醸成の基盤がない。
金正恩体制は、国内的には、一切譲歩をしていないという姿勢を維持しなければならない。それでも実態として、北朝鮮に核開発を放棄させるとすれば、かなりの困難を伴う交渉になる。
今後ありうる3つのシナリオ
今後の展開には、大きく分けて、3つのシナリオがある。現状維持、クーデター、武力行使である。
北朝鮮との間に新たな核抑止の均衡を作るべきだなどといった議論もあるが、それは基本的に、現在すでに発生していることである。2018年年頭に、金委員長とトランプ大統領が、双方が持っている核兵器のボタンについて威嚇しあったのは、そのことを示している。両国の戦力的な格差が埋まることがありえない一方、北朝鮮が核保有国であること自体は一つの事実だ。双方の威嚇と開発は、誰にも止めることができない。
現状維持の方向の中で、韓国や日本の核武装なども論じられるが、それは両国がアメリカに見捨てられる可能性に備えるかどうかという論点の問題であり、状況の解決につながる論点ではない。