昔はおだやかな性格だった妻が管理職になって豹変
亮一さんは、豹変した母親を怖がっている2人の息子を連れて、別の部屋に避難しました。すると、妻は「全部、お前らのせいだ!」とドア越しに怒鳴りつけてきたのです。
当初は感情のコントロールができない妻に動揺していた亮一さんですが、息を殺して嵐が去るのを待っているふびんな息子たちのためにも事態を早期解決しようと考えました。自分や子供に非があるとは思えない。しかし、頭が沸騰している妻に何を言ってもダメだろう。それなら謝るしかない。夫は息子たちと一緒に妻に謝り、何とかその場を収めたそうです。
その「事件」を境に、家の空気がいっそう重くなりました。
息子たちは母親の前では一切、嫌な顔をせず、言われたことを言われた通りにやるという「いい子」を演じるようになったのです。ただし息子たちが自分から母親には話そうとすることもありません。亮一さんは「息子と妻との間の距離はさらに開いた」と振り返ります。
妻に「あの日は気が動転していて」「お母さんのことを許してね」など自らを省みる言動があれば、状況は変わったのかもしれません。しかし仕事の忙しい妻の目に息子たちは映っていないも同然でした。「子どものために何かをする」ということはなく、常に「自分のため」という行動パターンは、改善されるどころか悪化するばかりでした。
▼「もう嫁には息子たちのことを任せられません」
当然、夫婦関係も悪化の一途をたどります。亮一さんは妻について「恋愛期間や結婚当初は、性格もおだやかでした」と語ります。ところが「課長」になったころから、残業も増えたようで帰宅時間が遅くなり、帰宅するなり夫に当たり散らすようになったと言います。だから、家はいつも怒号が飛び交い、“炎上”しています。
妻は、食卓で事あるごとに「パパと離婚するんだから!」と吐き捨て、ヒステリーを起こす回数は増える一方でした。これでは息子の心の傷は癒えるどころか、むしろ深くなるばかり。亮一さんはそうした状況に耐えかねて、私のところへ相談にきたのでした。
「もう嫁には息子たちのことを任せられません。子供のことを何だと思っているのか。もう耐えられません……」
子供の精神衛生上、離婚したほうがいい。亮一さんは心に決めていました。妻として不適格なだけならまだしも、母としても不適格という状態では、ひとつ屋根の下で家族としてやっていくことはできません。子供の親権も父親である自分が持って育てていくことを望んでいました。
ただ、「権利意識」の強い妻が、それをイエスと言うとは思えません。
亮一さんは妻に対して「離婚は子どものことを最優先に考えた結果だ」と前置きした上で、「今は、最低最悪の家庭環境だから、翔太、隼太をできるだけ早く助け出したいんだ」と訴えかけようと考えていました。
私は亮一さんと何度もやり取りを繰り返し、妻を説得するための「対策」を立てることにしました(以下、後編へ)。