数値目標は常に3つの視点で捉える

ある日、事業統括部の担当役員が言っていた目標数値についての考え方は、非常に興味深いものでした。

「目標を常に3つの視点で考えるべき。1つ目は、予算に基づいた目標設定。この予算というのは、会社がその事業への期待、つまりあるべき『理想』の姿である。目標達成を目指すということは、そのあるべき姿にどうやって近づくことができるか? を考えることである」
「2つ目は、昨年対比からの成長に基づいた目標設定。これは、去年の自分・事業からどのくらい『成長』しているかを見る指標。つまり昨年対比でプラスの場合は成長していて、マイナスの場合は、成長どころか衰退しているわけである」
「3つ目は、前月対比の成長に基づく目標。これは、先月の自分・事業からどのくらい早く成長しているか、つまり成長の『スピード』を見る指標。ベンチャー企業や大企業の中でも新規事業は事業サイズが小さいので、この前月からの成長スピードを意識すべき」

事業統括部は、楽天のさまざまな部署を横串で見てサポートする部署ということもあり、3つの物差しで目標や事業の進捗・成果を見る必要性がありました。

このアドバイスをいただいてから、自分が事業責任者として数字を見るときは、現状の数字に関して、あるべき理想である予算目標だけでなく、成長の指標である昨年対比に対してどうなっているか、その事業が新規事業であれば、スピードである前月比を必ず見るようにしています。

この3つの指標で達成していれば、単純に予算設定が低いから達成しているだけ、とか、新規事業で規模が小さいから成長して見えるだけ、といったことを他部署の人から言われることはありません。

と同時に、この3つの視点で見て、あなたの担当する事業が成長していれば、あなたの会社の経営陣は必ず、あなたの頑張りや結果に目をとめてくれることでしょう。

小林史生(こばやし・ふみお)
コンサルタント
1974年生まれ。関西学院大学卒。デューク大学 経営大学院経営学修士(MBA)。2000年に楽天に入社。楽天市場初期の主要メンバーとして複数の事業部長を歴任。2008年から買収した米国企業2社の立て直しのため、ニューヨークとカリフォルニアに計8年間駐在。現在はライフエンディング事業を手掛ける鎌倉新書の経営メンバー。また複数のベンチャー企業のアドバイザーも務めている。
(写真=iStock.com)
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