なぜ収入・家・車を手に入れても幸せになれないか

フランクは本書で3つの命題を挙げています。

命題1 人には相対的な消費が重要だと感じる領域がある。
命題2 相対的な消費への関心は「地位獲得競争」、つまり地位財に的を絞った支出競争につながる。
命題3 「地位獲得競争」に陥ると、資金が非地位財に回らなくなって幸福度が下がる。

写真=iStock.com/TriggerPhoto

つまり、幸福度を上げるためには、休暇・旅行・パートナーとの交流・健康など非地位財の獲得が必須であるにもかかわらず、多くの人々は、収入・家・車など地位財獲得に躍起になってしまいがちというわけです。

 
▼「非地位財」にお金を使うことができればハッピーに

このことを踏まえ、フランクは本書でこのような解説をしています(*、**は編注)。

<より大きな家を買うために長時間働こうと考えるとき、人は家の絶対的な大きさではなく、相対的(*他人と比較して)な大きさによって満足度が増すと期待します。この場合、大きな家を買うことの満足度が、余暇(**前出の「非地位財」の例)が短くなることで失われる満足度を上回らなければなりません。

ところがみんなが一斉に同じ動きをすれば、家の相対的な大きさの分布はそれまでと実質的に変わりません。とすると、誰にとっても家の相対的なサイズは期待したほど大きくなりません。ほとぼりが冷めたころになってようやく、家の絶対的な大きさだけでは、それを得るために犠牲にした余暇の埋め合わせはできないと気づくのです。

そうは言っても、他の人がより大きな家を買っているのに、自分だけが買えないというのもつまらない話です>

他人より相対的に上の地位財の獲得へ……。繰り返しますが、そうした地位獲得競争のために地位財へ支出することで、非地位財に回す資金がなくなると幸福度は下がるのです。地位財への支出は相対的消費ですから、際限がありません。「わかっちゃいるけど、やめられない」というところでしょうか。こうした不毛な争いより非地位財に資金を回したほうが幸せになれるはずです。