「五輪は核・ミサイル開発の取引材料にはならない」

毎日新聞も1月5日付の第1社説で、金正恩氏の新年の辞を取り上げている。

冒頭で「国際的孤立を打破するために平和の祭典を利用する。北朝鮮のそんな思惑が透けて見える」と指摘し、見出しで「文政権は意図を見誤るな」と韓国に注文を付ける。

その社説の前半で「北朝鮮が純粋に五輪を盛り上げようと考えているとはとても思えない。むしろ、五輪を成功させたい文政権の事情につけ込んだ揺さぶりと見るべきだ」ときっぱり北朝鮮を否定する。朝日社説同様、うなずける主張である。

さらに毎日社説は「読み取れるのは、同盟関係にある米韓の離間を図ることで自らの立場を有利にしようとする計算である。北朝鮮はこれまでも同様の試みを繰り返してきた」と指摘する。

そのうえで北朝鮮のしたたかさを「南北対話が始まれば、北朝鮮は米韓合同軍事演習の中止を五輪参加の条件として持ち出してくる可能性がある。韓国による独自制裁の解除を求めてくることも考えられる」と解説し、「だが五輪は、核・ミサイル問題での取引材料になるようなものではない。文政権は五輪の政治利用を許さない姿勢を明確にすべきだ」と主張する。

社説が似通うほど北朝鮮問題は重大

後半で毎日社説は「北朝鮮がここにきて南北対話に応じようとする背景には、相次ぐ国連制裁で石油禁輸が強化されたことの影響もあるのではないか。当面は備蓄や密輸でしのげても、将来的な展望を描くのは難しいからだ」と指摘した後、こう主張する。

「(韓国の)文(在寅)政権にはそうした北朝鮮側の事情を逆手に取って、核・ミサイル問題の解決につながる端緒を見いだす戦略が求められる」

これもうなずける主張だが、前述した朝日社説とほとんど同じ内容だ。朝日社説と毎日社説が1月5日付という同じ日付で掲載されている以上、どちらかがどちらかの社説を見て書いたということは考えられない。大手新聞社の社説が似通うほど北朝鮮問題は重大なのだろう。

次のように、毎日社説の最後のくだりも朝日社説と似ている。

「そのためには北朝鮮の意図を冷徹に見極め、日米と緊密に協議しながら対話に臨むことが必要だ。両国との連携は、北朝鮮と交渉する韓国の立場を強めるものである」