病気の原因を取り除き、体を変えていく

医療の世界は日進月歩です。多くの人の治療をしていくうちに「断食」が効果的な人がいることもわかってきました。「断食」といっても、1~2日間程度の断食でも効果が表れる人がたくさんいます。

断食は、脂肪コントロールに大きな効果を発揮します。体の細胞のエネルギーシステムは、まずブドウ糖を利用し、それがなくなったら脂肪を燃やすという順序で作動します。断食をするとブドウ糖が足りなくなるので、細胞は体内に蓄えられた脂肪を燃やしてエネルギーにします。脂肪は、私たちにとって必要不可欠ですが、余分にあると動脈硬化など、体の老化の原因となるものですから、余分な脂肪がなくなるのは結構なことです。脂肪を燃焼する回路をケトン体回路といって、人によって機能差がありますが、ケトン体回路が回りやすい人は糖質制限や断食療法が合っているといえると思います。

潰瘍性大腸炎の患者さんは、症状が重くて食べられないという時期を経験している人も多いと思いますので、断食はそれほど抵抗なくできるかもしれません。ただ、「低血糖」による発作が起きる恐れがありますので、無理な断食は絶対にやめましょう。

さらに、断食後は、胃腸の中が空っぽの状態ですので、徐々に食事の量を増やしていきます。刺激物や消化の悪い固形物は避け、野菜や豆腐など柔らかく消化に良いものを少量ずつゆっくりとよくかんで取っていきます。

私の専門である「星状神経節ブロック療法」も、潰瘍性大腸炎に効果をあらわす療法のひとつです。首のところにある交感神経節に局所麻酔注射をすると、一気に血流が促され、自律神経のバランスが整い、自然治癒力が活性化していきます。この療法を取り入れているペインクリニックで(星状神経節ブロックの保険適用のある疾患も症状としてあるなら)、保険で受けることができるのも特徴のひとつです。

代替療法を取り入れることには賛否があると思います。ただし症状にフタをするだけの治療では根治はしません。やはり、その人の根本部分から病気の原因を取り除き、時間がかかっても体を変えていくという取り組みが必要です。それには代替療法は有効なものだといえます。

私自身、潰瘍性大腸炎の経験者として、患者さんたちには、ぜひ治療の中に希望を持ってもらいたいと願っています。「治った」という先人の例はさまざまです。治療法はひとつではありません。その実例を紹介していくことが、治療の一番のモチベーションになると信じて、これからも寛解の実例を蓄積していきたいと思います。

西本 真司(にしもと・しんじ)
西本クリニック院長
1961年、和歌山県生まれ。近畿大学医学部卒業。熊本大学医学部付属病院麻酔科、熊本赤十字病院麻酔科、山鹿市立病院を経て、96年、西本第2クリニックを開業。2006年、西本クリニック院長に就任。ペインクリニック医。著書に『潰瘍性大腸炎が治る本』『潰瘍性大腸炎 医師も患者もこうして治した』『潰瘍性大腸炎は自分で治せる』(すべてマキノ出版)など。
(取材・構成=ジャーナリスト 田中響子)
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