自分の経験を患者さんにどう生かすか
西洋医療は救急の症状や深刻な状態の時には大変有効ですが、長期間にわたる強い薬の服用は体への負担が大きい。治療が長丁場になる場合は、免疫力を上げる必要があります。その点、代替補完療法には、食事療法、断食療法、気功、呼吸法、笑い療法、音楽療法、簡単な体操など、全身を動かしたり、脳に心地よい刺激を与えたりしながら、免疫力を上げられるものがあります。
いろいろな療法を試していましたが、仕事の内容がハードになると決まって再燃を繰り返していました。3回目の入院の時、とうとうステロイドを使わなければならないほどまで症状が悪化しました。あれだけ避け続けてきたステロイドだったのですが、その治療効果に驚きました。私自身、医者でありながら、西洋医療の重要性を実感した体験でした。
最初の発症時から代替補完療法を積極的に取り入れ続け、7年を過ぎた頃に寛解(病状が治まっておだやかであること)を迎えました。それ以来、今日まで一度も再燃していません。自分が完全寛解になったことから、多くの潰瘍性大腸炎の患者さんを治療してきました。これまでに100人以上の患者さんを寛解に導くことができました。大変うれしいことです。
私のクリニックでは、ガイドラインに沿った西洋医学の治療をしながら、私が試した代替療法も取り入れています。患者さんが100人いれば、100通りの処方箋があり、一人ひとり、その療法が異なってきます。
あるとき、私は、患者さんに共通する“ある傾向”に気づきました。それは、潰瘍性大腸炎になる人は「自分を責める」といった性格的な傾向が潜んでいるのではないかということです。
私自身もそうでしたが、家族の中でも兄と弟に挟まれて、他人や周囲に気を遣いつつ、物事がうまくいかないときは自分を責める癖がありました。潰瘍性大腸炎は自己免疫疾患です。つまり、自分の免疫が自分の健康な細胞を攻撃してしまう。患者さんは、いわば自分で自分を責める思考が体の細胞レベルでも展開されているのです。このことに気づいてからは、治療と共に、患者さんの心理的な問題を探し出し、問題が解決できるよう患者さんと一緒に取り組むようにしました。