寝ている夫の指先にスマホをつけて指紋認証

夫の行動や数々の状況証拠から「どうも怪しい」と感じた妻は、夫の身辺を調べ始めます。もちろんそのときは浮気を疑っています。妻たちはさまざまな手を使って、不倫を証明する証拠を探し出します。

浮気を確定する証拠として最もポピュラーなのがLINEの履歴です。ここ数年、不倫カップルが連絡を取り合う手段は電子メールでも手紙でもなく、圧倒的にLINEなのです。

最近の男女は電話もあまり使いません。私たちの事務所には60代の方も相談に見えますが、その世代でも男女間の連絡にはLINEを使っているケースがあります。

LINEアプリはいちいちパスワードを入れる必要がなく、スマホの認証さえクリアできれば、簡単に履歴にアクセスできてしまいます。起きている間は警戒してスマホを手放さない夫も、寝てしまえば無防備です。妻はスマホを探し出し、「これがスマホの認証パスワードではないか」と思われる言葉をいくつか入力して、やすやすと夫がLINEで交わしたやり取りを見てしまいます。当事務所に相談に来る女性は、こともなげに「夫の考えていることなんて、だいたいわかりますから」と口をそろえます。

最新のスマホには指紋認証を備えているものもありますが、そんなものは寝ている夫の指先にスマホをつければ済むことです。そうやってLINEで交わされた会話の画面を自分のスマホで撮影し、法律事務所に持ち込まれる方が多いのです。「妻にはスマホは見られてしまうもの」と覚悟して、問題のありそうなLINEでのやり取りは、すぐに削除しておくべきでしょう。

裁判の証拠として考えた場合、「不貞を行っている」と裁判所が認めるかどうかは、肉体関係を想起させる言葉が使われているかどうかがポイントになってきます。

そのものズバリの言葉でなくとも、比喩的な表現で「ああ、これは肉体関係のことだ」とわかる場合は「アウト」です。たとえば「食べちゃうぞ」といったいい回しでも、前後の話のつながりから「これは肉体関係があった」と推察されるケースがあります。

一般に浮気相手とのLINEは、次第にエスカレートしていきます。読んでいて赤面するような“行為”の中身を赤裸々に書いている場合もよくあります。最初から何も書かなければいいのですが、当事者たちは「いけない恋」に舞い上がってしまい、つい書きたくなってしまうのです。これはもちろん「アウト」です。

反対に「今度、一緒に食事しましょう」程度の誘いは、妻を怒らせるかもしれませんが、不貞の証拠にはなりません。「2人きりで食事しましょう」も「セーフ」です。

恋人に送るメッセージには、ハートマークがたくさんつくのが常ですが、それも証拠にはなりません。LINEなどのやり取りでは、恋人同士でなくてもそうしたやや大げさなメッセージが行きかうことも珍しくはないからです。また、裁判では一般にキスをしたくらいでは不貞行為とは認められません。この程度の愛情表現は、疑わしくはあっても「アウト」とまではいいきれないのです。