子供はボードゲームの盤面で「社会の縮図」を知る

そうした力を子どもに身に付けさせるために親として何をすればいいのか、2人の子供を持つ私自身もさっぱりわからなかった。そもそも従来型の教育を受けてきた親世代に本物の思考力や判断力が備わっているのか怪しいのだから、わからなくても無理はないのだろうが。

しかし、「ボードゲームさえやっていれば、思考力も判断力も表現力も主体的に学習に取り組む態度も、大丈夫だ」とLudixLabの皆さんは太鼓判を押す。子供にとっても楽しい「遊び」だから、勉強のように「やりなさい」と叱る必要もなさそうだ。

藤本さんの言う「人の振る舞いを見て学ぶ=ソーシャルラーニング」は重要だ。私たちは社会に出て企業に勤めるまで、ソーシャルラーニングの機会が少ない。でも、それでは“生きる力”が不足したまま社会人として働き出すことになり、グローバル競争やAIとの仕事の奪い合いで負けてしまう。

▼なぜ企業研修でボードゲームを使うのか?

「LudixLab」メンバーで、ボードゲームを使った企業研修を行っている高橋興史さん(カレイドソリューションズ代表)は、日本のビジネスマンについて次のように語る。

「日本のビジネスマンは、知識レベルは高いのに、それを戦略的に使うのは苦手です。たとえば、サイコロを2つ使ってプレイするゲームで、出る可能性が低い“12”に張って、簡単に負けてしまうような非合理的な選択をする人が少なくないんです(※)。あらかじめゲームで失敗を繰り返しておけば、知識を有効に生かせるようになります」

※サイコロ2個の出目の組み合わせ36通りのうち、“12”は6+6の1パターンしかないが、“5”なら、1+4、2+3、3+2、4+1の4パターンある。それにもかかわらず“12”に張る人が少なくないという。

また「LudixLab」メンバーで教育コンサルタントの為田裕行氏(フューチャーインスティテュート代表)は「ボードゲームは失敗から学べる点がいい」という。

「これが実際の仕事のミスなら大変です。ボードゲームなら、実際の生活には問題がないところで経験値をあげていけるので安心です」

つまり、ボードゲームは盤上に再現された「小さな社会」で、子供たちが社会に出てから遭遇する課題解決をあらかじめ練習できる優れたシミュレーターなのだ。

*EQが育むゲーム「スカル」。バラのカード3枚、ドクロのカード1枚の4枚の手札でプレイ。ドクロを開いたら負けというシンプルなゲームだが、相手の性格を考え駆け引きをする心理戦が楽しい。プレジデントFamily冬号「頭がよくなるボードゲーム18」で紹介。