慰謝料の時効は「離婚から3年」知らずに数百万取りそびれ

聞けば、離婚の決め手は調停期間中に妻の不倫が発覚したことでした。それまでは、何とか関係を修復しようと必死だった初彦さんでしたが、堪忍袋の緒が切れました。そんな妻なんか、こっちから願い下げだよ、と。

離婚成立により、3人の幼い子供たちの親権は妻へわたり、また、手に入れたばかりのマイホームを売って、財産分与することになったそうです。離婚に関する知識がほとんどなかった初彦さんは、妻と弁護士にされるがままでした。現在は「実家には顔向けができず、今は1人寂しくアパートで暮らしている」と初彦さんは言います。

その後、離婚成立から4年が経過。自分を裏切った元妻に対する怒りは収まっていませんでした。そしてついに反撃に出ます。弁護士に依頼して妻や妻の不倫相手の男へ慰謝料を請求したそうです。

ところが、それはかないませんでした。

*写真はイメージです(写真=iStock.com/st-palette)

慰謝料の時効は「離婚から3年」で、すでに手遅れだったのです。初彦さんは、不倫した妻やその相手に慰謝料を請求できることを「なんとなく知っていた」そうですが、「3年」という期限があることまでは知らなかったのです。3年以内に請求すれば、数百万円は手にできたかもしれません。ただし、初彦さんはお金がほしかったわけではありません。悔しさを少しでも晴らしたかったのですが、あえなく返り討ちあってしまった格好です。

▼「僕は子供も家も失いました。でも、妻や男は……」

その後、私の書いた離婚トラブル解決に関する本を読み、訪ねてきた初彦さんは、すがるような目で訴えました。

「僕は子供も家も失いました。でも、妻や男はどうでしょうか? 何も失うことなく、今も平気な顔で暮らしていると思うとやり切れません。不倫は犯罪じゃないんですか! こんな理不尽が許されるんですか? 泣き寝入りするしかないんですか!」

何より悔しいのは、離婚は妻の不倫のせいなのに、結果的に愛する3人の息子と引き離されてしまったことでした。しかしその一方で、わが子は本当に自分の子なのか、もしかすると自分のDNAではなく、妻の不倫相手のものではないかという疑念も持ち上がってきました。とはいえ、いまさら戸籍上の父親を「交換」するわけにもいかず、悶々(もんもん)とした気持ちを抱えているのです。