5位のバリスタは「エリア担当」

昨年のJBCでは9位(セミファイナル)だったが、今年5位に躍進したのが飯高亘氏(32歳)だ。バリスタの中には「高校時代から毎朝ペーパードリップで淹れたコーヒーをサーモス(保温水筒)に入れて通学していた」という人もいるが、飯高氏は違う。

「昔はコーヒーが苦手でした。それが成人して初めて飲んだエスプレッソのおいしさに驚きと衝撃を感じたのです。もともと自分が共感するものは発信したい性格なので、バリスタという仕事に、発信する立場としてのやりがい、将来性を強く感じました」(飯高氏)

大会で実演する飯高亘氏。今年5位に躍進した。

現在は店舗事業部・エリア統括だ。「つくば駅前店」「つくばLALAガーデン店」の2店舗をまわり、品質チェックを行う。店内在庫の状態やクリンネス(清潔・整理・整頓)も意識する。

「特にダスターのたたみ方を注意して見ます。小さな部分ですが、こうした基本がスタッフにも浸透すると、店の他の部分も気になって見える、と考えています。これ以外には、外部イベントの催事に出店。最高級コーヒー豆『パナマ・ゲイシャ』フェアの販促活動なども行います」(飯高氏)

そうした日常業務とバリスタ大会との関連をこう続ける。

「いかに消費者目線で提供するかは共通しています。おいしいコーヒーを淹れるのは大前提で、どう相手と接しながらドリンクを提供するかの一連の流れは、店舗の来店客も大会の審査員でも同じ。日々の業務を大切にする姿勢は、必ず大会で活きるはずです」(飯高氏)

6位のバリスタは「22歳の女性店長」

今回の決勝進出者の中で最年少が6位入賞の安優希氏だ。さまざまな業界で、女性の活躍を阻む「ガラスの天井」があるなか、22歳の安氏の躍進も注目された。実は、もともとはパティシエ(お菓子職人)志望だったという。なぜ、バリスタ志望に変えたのか。

パティシエ志望だったという安優希氏。出場者は、すぐ横から審査も受ける。

「私は本店のあるひたちなか市出身で、両方の祖父母も市内在住です。専門学校生だった時期に、もともと親近感のあったサザコーヒーの取締役や社員の方が講師として来られ、授業の一環として30~50時間、JBCをまねたロールプレイングを行いました。それがきっかけで、バリスタという職種に興味を持ったのです」(安氏)

安氏が語る専門学校とは、茨城県で最大手の中川学園調理技術専門学校だ。サザは同校と提携し、調理製菓コースの学生の授業に講師として2人派遣する。そのうちの1人が同社の“バリスタ監督”である小泉準一氏(取締役)で、躍進の陰の立役者だ。

飲食系に興味は持ちつつ、卒業後の進路は未定だった彼女の素質を見抜き、入社を勧誘したのも小泉氏だ。同社のバリスタチームがその年に欠員ができたのも安氏に幸いし、入社と同時にバリスタチームに加入。1年目(入社3カ月)で55位、2年目は20位、3年目の今年は 6位と一気に躍進した。現在は大洗店の店長を務め、日々来店客とも向き合う。