・児童書・図鑑ジャンルながら累計120万部ヒットの秘密
・なぜ「ざんねん」に着目したのか
・「ざんねん=進化」とは?
・図鑑に載っていない「ざんねん」ないきものネタをどう集めたのか
・大人も楽しめる児童書
・初代と続編の違い
「コアラはユーカリにふくまれる猛毒のせいで一日中寝ている」、「ゴリラは知能が発達しすぎて下痢ぎみ」……児童書『ざんねんないきもの事典』(高橋書店、以下「初代」)は、“えっ! そうだったの?”と大人も驚くような、生物の愛すべき「ざんねん」が満載の本だ。ヒットを受けて2017年6月には続編となる『続 ざんねんないきもの事典』(以下「続」)が発売された。こちらも「リスはドングリをうめた場所をすぐにわすれる」、「ワニの性別は気温次第」など、第一弾に負けず劣らず「ざんねん」ネタが詰め込まれている。
シリーズ累計の発行部数は、11月に120万部を突破した。本書が児童書であり、年間3~5万部売れれば「ヒット」だといわれる図鑑のカテゴリーで、すさまじい売れ行きとなっている。日本出版販売(日販)の2017年ベストセラー総合ランキングでは、2位に初代、8位に続がランクイン。児童書が総合ランキングにシリーズで2冊入るというのは異例のことだ。
タイトルになっている「ざんねん」は、本書においてネガティブなものではない。「続」の冒頭には、シリーズを通じて監修に携わった今泉忠明氏によるこんな言葉が記されている。
確かに大人が読んでみても「ウマは全力で走ると死ぬ」、「カピバラはおしりをグリグリされると寝てしまう」など、われわれが当たりまえに知っている生き物たちも意外な素顔を持っていることを知り、驚かされる。だがそれ以上に“そんな一面があったのにこんなにけなげに生きて……”という、生き物たちへの愛着も同時に湧き起こってくる。
「ざんねん」な生き物たちは「なぜそうなった」のか。シリーズでは第1章に「ざんねんな進化のお話」として、その理由が子どもに分かるように書かれている。「ざんねん」な特徴を有してしまったのは、長い地球の歴史において繰り返される環境の変化に都度適用し続けた「進化」の結果であり、いまわれわれから見ると「ざんねん」に見えるだけ……。こんな前置きに続く「ざんねん」を読み進めることによって、生き物たちへの興味も一層高まる。
この人気シリーズはいかにして生まれたのか。『続 ざんねんないきもの事典』の編集を担当した書籍編集部第1課の山下利奈主任と、宣伝を担当した広告・広報部の宮越梓さんに聞いた。