図鑑の編集の中で蓄積された「どうしてこうなった」

初代の『ざんねんないきもの事典』を手がけた編集者はすでに高橋書店を退職しているが、彼は図鑑編集のベテランだったという。さまざまな生物の情報を集める中で「どうしてこうなった?」「もっと楽な生き方があったんじゃないか?」と思う特徴や能力を持つ動物が多いと感じていたことが、企画の発端になった。

「そのツッコミどころというのが、雑学が好きな子どもにはすごい受けるんじゃないかなと思ったのが、『ざんねんないきもの事典』のきっかけだったんです。今まで作っていたような図鑑ではちょっと出せないけど、すごく気になっちゃう、という情報がたくさんあった。こういう情報をまとめた別の本が作れたら面白いんじゃないかな? というところから企画が始まりました」(山下氏)

本書は、企画の出発点が“図鑑”でありながら、写真ではなくイラストを採用しているほか、ひとつの生き物についての文章量も多いなど、一般的な“図鑑”とは異なる体裁になっている。想定読者層である小学校3~4年生の男子に向けて、“読みやすさ”を重視したうえでのこだわりだった。

「こういう細かい字を読むのが苦手な子どもに、生き物のおもしろい情報を通して、もっともっと生き物のことも本のことも好きになってほしいという意図からです。フォーマット自体も、写真を使ってないですし文章もちょっと軟らかいものになっていたりします」(同)

漢字には全てルビがふられ、小学生に難しいものはひらがなに置き換えられている。1~2ページにつき1つの生き物についてイラストと文章が配置されているので区切りも良い。読書を始めたばかりの小学生には内容的にも分量的にもほどよい加減だろう。こうして小学生男子に向けた初代『ざんねんないきもの事典』を世に出したところ、「これは大人にも受ける」という声が上がった。社内の営業担当、そして書店員からだった。

かわいいがリアルなイラストと、ひらがなが多めの文章で、子どもも楽しく読める構成になっている。