自分の考え方を客観的な視点で検証する

1つ目は反省することです。論語では「吾(われ)日に吾が身を三省(さんせい)す」という言葉で自分の生き方について反省することの大切さを説いています。これまで多くの経営者に会ってきましたが、成功するかどうかを最後に分けるのが、この要素です。ほかの部分は非常に優れているのに、反省だけができずうまくいかないという人を多く見てきました。それくらい大切なことです。

2つ目は自分を高めることです。論語には「人の己(おのれ)を知らざるを憂えず、人を知らざるを憂う」とあります。人が自分を理解してくれないと悩むのではなく、自分が人のことを理解できないことを悩むべきだという意味です。上司の立場になっても、今の自分に満足せず、生き方の勉強をし続けることが必要です。

3つ目は利他心を身に付けることです。論語では「苟(いや)しくも仁(じん)に志せば、悪しきこと無きなり」「我れ仁を欲すれば、斯(ここ)に仁至る」など、利他心を意味する「仁」という言葉が繰り返し出てきます。仁は「リーダーの持つ人をはぐくむ愛情」という意味で、上の立場に立つ人には必須となる資質です。仁を欠くと、必ずビジネスで失敗します。東芝の不正会計や三菱自動車の燃費データ不正など、他人のことを考えることができない、仁を欠いた経営者による行動と言えるでしょう。

論語のような古典は、長い間にわたり多くの人が参考にしてきた知恵が詰まっています。自分の考え方を客観的な視点で検証するための助けになる。古典をそのまま読むのは難しいので、最初は解説書を読むのがお勧めです。

小宮一慶(こみや・かずよし)
経営コンサルタント。小宮コンサルタンツ代表。京都大学法学部卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。在職中、米国ダートマス大学タック経営大学院に留学、MBA取得。1991年岡本アソシエイツ取締役等を経て、95年独立。著書に『人生が変わる最高の教科書「論語」』。

 
(構成=吉田洋平 撮影=永井 浩)
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