企業の若手育成能力低下でモンスター社員が増殖

こうした若者の傾向について石油業の人事課長はこう冷ややかに語る。

「バブル崩壊以降のこの20数年間に大企業の倒産や不況の現実を目の当たりにして育ち、安定や安心、安全を求める傾向が強くなっているのではないか。しかも、親や学校に大事にされ、安全なレールの中での選択肢しか与えられず、厳しい現実と対峙した経験も少ない。社会全体が過保護にしてきたからでしょう」

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もちろん企業も新入社員への対応については、研修をはじめ仕事を通じて業務上の知識やスキルを習得するOJTなどを実施している。

だが、近年ではOJTがあまり機能していないともいう。上司や職場のメンバーが自分の仕事に忙しく、新人の成長度合いを共有することなく、若手社員の少し先輩である指導役に任せっぱなしにしている、といった背景があるからだ。

厚生労働省の「能力開発基本調査」(2016年)でも能力開発や人材育成に何らかの問題があると解答した事業所は72.9%も存在する。

具体的な問題点では「指導する人材が不足している」(53.4%)とする企業が最も多く、続いて「人材育成を行う時間がない」(49.7%)、「人材を育成しても辞めてしまう」(43.8%)と答えている。

若手の仕事への意欲が不足している原因は以前より企業の育成能力が低くなっていることがあげられるのだ。このことが、礼儀・礼節を知らず人の話も聞かないモンスター化した若手社員が増殖する原因となっているのかもしれない。

▼外国人社員も日本式の「組織」になじめない

今後ますます先輩社員と若手社員との軋轢や乖離は大きくなり、若手の定着率は下がっていくかもしれない。しかも、日本式の「組織」になじめない存在は他にもいる。外国人社員だ。

相撲界に限らず日本企業も2010年以降、外国人留学生を中心に外国人を積極的に採用している。だが、せっかく優秀な外国人を採用しても定着しないという問題を抱えている。