「殺すぞ!」と包丁を……しつけという名の虐待

ある日の朝、息子が朝食をなかなか食べ終わらずに保育園に行く時間が迫っていました。まだ4歳なので食べるのに時間がかかるのでしょう。しかし、相談者の誠司さん(以下、夫)によると、妻の凛子さん(以下、妻)はその時、こう言ったそうです。

※写真はイメージです

「早くご飯食え! これじゃ、みんなと一緒に学校行けないよ! 保育園やめるか? ご飯食べないなら、帰ってこなくていい。誠也! どこかへ捨ててこようか?」

夫は「そんな言い方は……」と妻をいさめ、息子をかばおうとしたところ、誤って手が滑り、料理の盛られた皿を落としてしまいました。その瞬間、妻の怒りは頂点に達しました。火に油を注ぐとは、まさにこのこと。「早く食べないと殺すぞ!」。妻の怒号が食卓に鳴り響いたのです。

実際、妻は包丁を取り出し、手に持ったままダイニングテーブルに突き刺そうとしたのです。当然、息子はおびえ、激しく泣き出しました。妻は怒りで感情の制御ができないといった様子で、右手はわなわなと震えていました。そして、われに返ったのでしょうか。玄関から飛び出してしまったのです。

▼「2度と同じことはしません。信用してください」

男女問題研究家・行政書士の私が相談を受けた案件には、夫が妻にDVをするケースもかなり多いですが、その逆も少なくありません。誠司さんの妻のように自宅で暴れたり、子供に手を上げて身体的・精神的な虐待をしたり、家財を壊した挙げ句に勝手に家を出ていったりする家庭は一定数存在します。

妻に非がある場合、どのように対処するのが正解なのでしょうか?

経緯はともかく妻を追い出すことに成功したのだから「かんしゃく持ちの暴力妻」と縁を切るのなら、今が絶好機と前向きに考え、ここで別れ話を切り出すのも一考です。考えようによっては妻の家出は「渡りに船」なのだから。

家出から3日後。実家に身を寄せていた妻から夫宛てにメールが届きました。「2度と同じことはしません。今回は信用してください」。懇願してきたわけですが、夫は悩みました。妻のことを許し、自宅に戻し、夫婦としてやり直すか否か……人生の岐路に立った夫は、なかなか決断ができずに私のところへ相談しに来たのでした。