また、自民党内の派閥のパワーバランスは、今回の衆議院選挙後も大きくは変わらず、首相を支える細田派が最大派閥、首相の盟友率いる麻生派が第2派閥で、ポスト安倍として名前の挙がる岸田政調会長、石破議員の派閥は、党内では大勢となっていない(図表2)。来年の自民党総裁選で安倍首相が再任され、来年以降も安倍「安定」政権がしばらく続くというのが筆者のメインシナリオである。
財政健全化目標の先送りに成功
今回の選挙の結果が、日本経済に与える影響が大きいといえるもう一つの理由が、首相が財政健全化目標の先送りに成功したということである。
首相は、選挙にあたり、19年10月に予定される消費増税の税収の一部を、借金返済ではなく幼児教育無償化の財源へと使い途(みち)を変更し、同時に、財政健全化目標=2020年度のPB(プライマリーバランス)黒字化目標を先送りすると表明した。海外の格付会社は、使い途の変更は日本の中長期的な成長に資すると前向きに評価し、10月12~13日に開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議の場でも、事実上の国際公約であった財政健全化目標を先送りすることに対して、各国から強い異論はなかったとのことである。国内債券市場でも、金利は上昇しなかった。
財政運営に「一定」のフリーハンドを確保
10月26日に開催された経済財政諮問会議では、PB黒字化の新たな目標設定に向けて議論が行われたが、政権の基本方針は「経済再生なくして財政再建なし」であり、世耕弘成経済産業大臣は、「経済への過度の負担を避ける観点から、PBの毎年の改善幅を国内総生産(GDP)比0.5%以内にとどめる」という国際通貨基金(IMF)の指摘を引き合いに出した。