あまりにも複雑で周辺諸国も消極的

国際社会、国連等は調査団の受け入れをミャンマー政府に要請していますが、ミャンマー政府はこれを拒否する方針です。国際社会としては、アウンサウンスーチー氏の指導力に期待していますが、同氏は明言を避けている状況です。また、周辺国の対応も、無国籍の人々が入国し、長期的に滞在することに消極的であり、積極的にこの問題に関与することは避ける傾向となっています。

この問題を複雑化している点は以下の通りです。

■ミャンマーに限らず、一神教のイスラム教と多神教の仏教では、相認める点が少なく、対立が先鋭化する傾向が見られる。
■19世紀以降の長い歴史の中で、仏教徒が多数派のミャンマーでは、ベンガル地方から移住し、定住化したロヒンギャには、強い嫌悪感を持っている(ミャンマーではロヒンギャをベンガル人と呼び、ロヒンギャという言葉さえ使っていない)。
■大多数のミャンマー国民は、今回の国際社会の反応に対しても反発しており、政府・国軍の対応を評価している。
■ミャンマー政府が主張するロヒンギャへのイスラム過激派の浸透、テロの実行についても、ある程度の説得力がある。
■2012年に民政移管し、2015年からNLDによる民政が実現されているが、現状においても国軍の影響力が高く、いつ何時でもクーデターが発生する可能性も否定できないなかで、NLDの指導者が国際社会にくみする発言はできない。また、一般国民も反発する可能性が高い。
■EU、米国などの国際社会は、今回の問題を人権問題としており、その点ではミャンマー政府に強硬に申し入れせざるを得ない。
■一方、周辺国のバングラデシュ、マレーシア、タイ、インドネシア等はロヒンギャの正式な受け入れを拒否している。