なぜ全員にiPadを支給したのか

ただし、残業を減らしてもその分業績が下がったら企業としては失格。生産性を上げる工夫も同時に行わなければ意味がありません。ちなみに、当社は14年3月の月間平均残業時間は57時間18分、これに対し16年7月は24時間41分と56.9%減ですが、売上高は123.8%アップしました。

では、当社はどうやってそれを成し遂げたのか。まずやったのはIT化。社員、パート、アルバイトから内定者にいたるまで全員にiPadを支給しました。

残業の原因のひとつに、Aさん→Bさん→Cさんという順番で進む仕事だと、Aさんが帰社するまでB、Cさんが作業にとりかかれないというのがありました。この場合、Aさんが定時後に戻ってきたら、B、Cさんは必然的に残業となります。ところが、AさんがiPadをもっていれば、外出先からデータや指示を送れるので、B、CさんはAさんの帰社を待たずに仕事を始めることができます。在庫も同じiPadで確認できるので、毎月末に3時間かかってやっていた棚卸しが、いまや30秒です。

もちろんIT化には先行投資が必要ですが、タブレット端末が8万円だったとしても、それで月40時間の残業を減らせれば、わずか2カ月でもとがとれるのですから決して高くはありません。まだみんなが竹槍で戦っているときに、いち早く飛行機を手に入れて空から攻撃すれば簡単に勝てる。IT化というのは空中戦ができるようにするための道具なのです。

それから、社員が残業をしたくてもできない環境にしました。そのひとつが全営業所に設置したネットワーク・カメラ。これは管理職なら誰でもiPadで見られるようになっているので、たとえ上司が出張中でも、残業しているとばれてしまいます。さらに、午後9時以降は社内のシステムにアクセスできなくなるようにもしました。