「お膝元」福岡でサービスがはじまらないモバイク

今年6月22日、モバイクは福岡市内でモバイク・ジャパン株式会社の設立を発表している。同日おこなわれた記者会見では、モバイク本社の海外展開統括担当クリス・マーティン氏、福岡市地域戦略推進協議会の事務局長、福岡市総務企画局理事の3人が登壇した。『Business Insider Japan』の記事によれば、モバイク側は「今後、モバイクは福岡市をかわきりに多くの人々の生活に寄り添いながら、日本全国へと展開を広げていきます」と説明したという。

だが、その8月にモバイクがサービスを開始したのは北海道札幌市だった。さらに記者会見から約4カ月を経た現在になっても、福岡市内でサービスがはじまる様子は見えない。モバイク・ジャパンの広報担当者は書面での問い合わせに対して、6月の記者会見の時点では、福岡市内に複数のポート(駐輪スペース)を設ける形でのサービス展開を「予定していました」と回答している。

「イノベーションに対して非常に積極的に導入を進められている福岡市や福岡地域戦略協議会(以下FDC)との協議によって、福岡へ本社を設立させていただきました」

回答書面によると、「各国の法律や文化慣習に合わせてサービスをローカライズし、責任ある運営をすることは世界中で必須であると考えています」とのことで、中国国内のような「どこでも乗り捨て」の形式は当初から想定せず、福岡での展開を目指していたようだ。

一方、福岡市に問い合わせてみると、モバイクとの微妙な距離感も感じさせる。

「6月の記者会見の時点では、具体的なことは特に決めない状態で、福岡からサービスを開始することも決まっていなかった。ただ、モバイク・ジャパン本社の拠点を置くということが決まったので、記者会見をした形です」(福岡市総務企画局企画調整部)

福岡市はモバイクからサービス開始の働きかけがあったことは認めたものの、6月の記者会見についてこう説明する。なお、ネット上には「福岡市長の反対があった」「条件が合わず物別れになった」とするうわさもあるが、市の担当者はこうしたうわさを明確に否定した。放置自転車問題への懸念は伝えたが、展開を止めるように命じた事実はないという。

「札幌(後述)の場合、地域のドラッグストアやコンビニエンスストアが駐輪場の一部を
モバイク向けのポートとして提供する形で話がまとまったようです」(同部)

あらためてモバイク側に、福岡市内でサービスが開始されていない理由を聞くと「福岡市や関係各社と協議を十分重ねた上で、できる限り早い段階での展開を実現できれば」という回答だった。やはり、ポートの確保をめぐる各方面との「協議」の難航が、福岡での展開が遅れている原因なのだろう。

※10月27日追記:福岡市のコメントについて部署名が間違っていました。初出では経済観光文化局企業誘致課としていましたが、正しくは総務企画局企画調整部です。訂正します。